(2) 日本IBM
■ One IBM
IBM はグローバルに加速するビジネスのスピードと競争環境の変化に対応するため、「One IBM」というスローガンを掲げ、世界140社以上ある法人のビジネスプロセスを一つに統合した企業形態である「Globally Integrated Enterprise( GIE、地球でひとつの企業)」の実現に向けて、経営変革に乗り出したのです。GIE によって、各現地法人の機能を統合し、「経営資源の最適化」を推進したために、社員は国を超えて仕事をするようになりました。
■ 導入の背景
IBMにとってのワークスタイル変革は、One IBMを実現するために場所と時間の柔軟性の確保が必要となったのです。
■ ワークスタイル変革のポイント
① 目的を明確にする
One IBMとなって仕事をするようになると、コミュニケーションをとる相手と時差や勤務場所の違いがあるため、深夜や早朝に業務を行ったり、Web 会議などで打ち合わせを行う必要が出てきます。それに対して IBM は、社員の勤務時間と勤務場所に柔軟性を確保することで対応しました。ここで留意すべきことは、企業がワークスタイル変革を考える際には、「ワークスタイル変革ありき」ではなく、会社としての目的をまず明らかにする必要があります。目的を明確にして、そのために制度やシステムを整備する、そういう順序で進めることが重要です。
② コミュニケーション基盤は皆が日常的に利用できるようにする
会えない社員とスムーズに仕事ができるようにするためには、コミュニケーションおよびコラボレーション基盤の整備が大変重要です。IBM では現在5種類のコミュニケーションツールを使って仕事をしています(図2)。
勤務制度の運用では、会社よりも社員に多くのことが求められます。テレワークは自分一人で仕事をするため、結果を出すように自己管理が必要になります。IBM の経験上、自律的な仕事の仕方はキャリアが浅い場合には、かなり困難です。One IBMの変革を始めた当初はさまざまな試行錯誤がありましたが、10年以上経った今ではすっかり定着しています。その中で大きく変化したのが個々の社員と管理職との関係です。One IBM 以前は管理職が日常業務を管理し、業務目標を設定していましたが、現在はコーチングに徹しており、業務目標は社員と共に設定するようになっています。