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自律はリーダーシップ3.0の第一歩:小杉俊哉氏

自律はリーダーシップ3.0の第一歩:小杉俊哉氏インタビュー 小杉 俊哉(こすぎ としや)プロフィール 慶應義塾大学大学院理工学研究科 特任教授 立命館大学大学院テクノロジー・マネジメント研究科 客員教授 合同会社THS経…

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自律はリーダーシップ3.0の第一歩:小杉俊哉氏インタビュー

小杉 俊哉(こすぎ としや)プロフィール

  • 慶應義塾大学大学院理工学研究科 特任教授
  • 立命館大学大学院テクノロジー・マネジメント研究科 客員教授
  • 合同会社THS経営組織研究所 代表社員

早稲田大学法学部卒業。マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院修士課程修了。NEC、マッキンゼー、ユニデン人事総務部長、アップルコンピュータ人事総務本部長を経て独立。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科准教授を経て現職。
専門は、人事、組織、キャリア、リーダーシップ開発。組織が活性化し、個人が元気によりよく生きるために、組織と個人の両面から支援している。
著書に『職業としてのプロ経営者』、『起業家のように企業で働く』(クロスメディア・パブリッシング)、『リーダーシップ3.0 〜カリスマから支援者へ』(祥伝社新書)など多数。

「自らのパートを分け与える」ことがミッション

小杉俊哉氏

あるとき、自分のミッションに気づきました。
それまでは、人の評価が気になり、評価を得るために仮面をかぶっていたのですが、それをとることにしました。私のミッションは、「自らのパートを分け与えることによって、人が気づきをもち、元気になる支援をすること」です。

それ以来、ミッションと関係のあることに注力し、関係のないことはやらないようにしました。具体的には、大学での授業、自主ゼミ、企業研修、講演、執筆活動を行っています。

慶應義塾大学での自主ゼミは、学生も私も、「やらなければならないこと」「単位や報酬などの対価を得られること」ではありません。

つまり、オブリゲーション(責務)を伴うわけではないのに10年間続いているのは、純粋にそれをやると元気になり、嬉しいからです。自主ゼミに参加している学生たちは、どんどん主体性を発揮し、自律的な活動が増え、とても元気になります。

この自主ゼミを通して、今年学生とOBOGでクラウドファンディングを使い「コスギの言葉」を出版しました。その中の言葉を借りれば「言葉と環境があれば人は自律的に変わっていく」ということを体感しました。実際に対面して話をするのではなく、本を読んだだけでも、メッセージに刺激を受け、変わっていく人はいるわけです。

ある学生は、「人はイメージ以上にはなれない。ただし、イメージしたところまではいける」という私の言葉を聴き、「人生が変わるくらいの変化」をしました。それまでは諦めていたこと、できないと思っていたことにチャレンジし、活躍するようになっていきました。自主ゼミでは、そのようなことがたくさん起こります。

人は、理論で納得させられても、動こうとはしません。
自らのパートを分け与えることにより、立場や世代が違っていても、魂が揺さぶられ、その結果、人は変わろうとします。パートを分け与えるということは、自分の血と肉を与えるイメージで、仮面を取り、自身らの失敗経験も包み隠さず話すことだと思います。

私は、MIT(マサチューセッツ工科大学)に留学をしていますが、企業留学ではなく自費留学です。家族を帯同し、借金をして行ったので、後がないわけです。

非常に優秀な学生の中で授業の難度についていけず総長から退学警告を受け、もがき苦しんでいる中、モルガンスタンレーにサマーインターンで採用されたときには、周囲から「奇跡」と言われました。なんとか卒業にこぎ着け最難関のマッキンゼーに採用された時も、周囲は驚いていました。

そのように苦労して入社したマッキンゼーでも、優秀な人たちに囲まれ求められるものに応えられないと感じて、1年で辞めました。そして、その後のキャリアも、決して平坦ではありませんでした。

振り返ると失敗や大変なことが多く、挑戦し、もがいてきたのですが、その結果、他の人には得がたい経験を積んだことが、現在、経営者から学生まで、世代を問わず私の話を聴いてくださることにつながっているのだと思います。

現代はリーダーシップ3.0の時代

リーダー像は、リーダー本人だけではなく、時代背景や組織の置かれている環境よって変化しています。
私は、リーダーシップの変化を、以下のように1.0~3.0とタイプに分けて捉えています。

  • 1.0 中央集権的な権力者
  • 1.1 分権指向の権力者:同じ権力者でも事業部に責任者を置き、権限を委譲
  • 1.5 調整者:権力で率いるのではなく、組織全体で共有する価値観と働く意味を与え、協調を促す
  • 2.0 変革者:組織の方向性を提示し、大胆に組織改編を行ない、競争や学習を促すことで組織を変革
  • 3.0 支援者:組織全体に働きかけてミッションやビジョンを共有し、コミュニティ意識を育てる。

現在は、リーダーが支援者としてメンバーの主体的な行動を支える<リーダーシップ3.0>の時代であると考えています。
背景には、これまでのように、画期的な技術やサービスを軸に、参入障壁を高くして長期に亘り収益を上げるビジネスモデルが通用しなくなったことがあります。

このような時代に企業を持続可能な存在にするためには、メンバー一人ひとりに働きかけ、主体性をもって自律的に動くことを支援するリーダーの存在が必要です。

かつてのようなカリスマ性のある強いリーダーではなく、人間的魅力によって周囲を動かすソフトパワーを備えたリーダーが求められています。

リーダーシップは誰もが発揮できるものですし、特に日本人は、リーダーシップ3.0を発揮する資質を持っていると思っています。

日本企業でリーダーシップ3.0を機能させるためには?

日本の経営者の方たちとお話をすると、多くの方が、「リーダーシップ3.0の考え方には大変共感しているが、うちの会社では社員の自律が進んでいないので、残念ながら3.0を発揮する段階になっていない」とおっしゃいます。

しかし、今は、社員一人ひとりに自律してもらわないと持続的な発展が難しい時代です。
さらには、多様な人財に自律的に動いてもらうことが求められる時代といえます。
ダイバーシティ&インクルージョンが必要であることは、多くの企業経営者は気づいています。

(注)ダイバーシティ&インクルージョン

多様な背景を持つ人財(ダイバーシティ)を組織に受容し、一人ひとりの意見やアイディアを聴き入れる(インクルージョン)ことで、変化の速いビジネス環境と多様化する市場に柔軟に対応し、組織の競争力を上げる経営戦略

ダイバーシティ&インクルージョンを実現するための第一歩は、多様な人財が発信し、活躍できる風土に変革することです。
そのためには、年功的要素を排除し、誰もが活躍できる場を意図的に作っていくような仕組みが必要です。

特に、優秀でやる気のある人には、バックグラウンドに関わりなく若手であっても、経営人財として抜擢し、トップとしての判断・決断を経験させるような取り組みが必要です。

現在の日本企業でダイバーシティ&インクルージョンを実現するためには、トップがリーダーシップを発揮して風土を変革することが求められます。
もし、現在のトップが変革できないというのであれば、社外からプロ経営者を連れてくる選択肢も考えなければならないと思います。

リーダーシップ3.0を目指す人へのメッセージ

リーダーシップ3.0のスタートとして、自律が大切です。
私が考える自律は、責務を果たすことに加え、「責務ではないけれど、やったほうがよいと思うこと、本当にやりたいこと」を実行することです。

やるべきこと、やらなければならないことだけをやっているのは、マネジメントです。
リーダーシップは、「やらなくてもよいこと」に足を踏み出さないと発揮できません。

まず、これをやったほうがよいのではないか、時間があればやりたい、誰かやってくれないかなぁ、と思うこと、これはあなたが気づいているという点で、Can(可能性、能力)の領域です。そこに足を踏み出す勇気を持って欲しいと思います。さらに、自分が責任者で自由に出来るとしたらやりたいこと、いわゆるWill(意志)の領域を考えてみるのです。

キャリアの世界では、Will,Can,Must(責務)の3領域が重なるような働き方が良いとされていますが、私は、この考え方を「Static(静的)モデル」と呼んでいます。
一方、私が考える自律的な働き方は、「Dynamic(動的)モデル」と呼んでおり、3つの要素を動的なイメージで表現しています。(図参照)

Dynamic(動的)モデル

MustとWillの2つが重なれば、それは、会社のビジョンと自身のビジョンが重なることで、仕事にやりがいが生まれます。
また、CanとWillが重なる領域では、会社のビジョンと自身のビジョンが重なり得ることで、今は会社のビジョンではないかもしれないが、将来を創ることになる仕事が発生します。

CanそしてWillの領域、すなわちやらなくてもよいことに踏み出すことでリーダーシップが発生します。
どこに対して発生するかと言えば、最初は、自分に対して発生します。
これを「パーソナルリーダーシップ」とか「セルフリーダーシップ」というのですが、別名、「自律」と言います。

Canは、身近なできることから始めればいいのです。
例えば、廊下にダンボールが積まれたままになっている状況があり、来客の時にみっともないので仕舞う場所を変えたほうがいいと思った人が、そのことを会議で提案し、ダンボールを片付けるというようなことです。

自身が主体的に動くことで周囲に影響を与え、その結果、人を動かして状況を変えたのですから、リーダーシップを発揮する経験を得たわけです。

この場合、上司や周囲の人たちは、フォロワーになったと言えます。
そのような経験を積み重ねることが、自律を遂げるためにとても重要なのです。

自律とは、自らが率先して何かを行うということで、自律がリーダーシップ3.0のスタートです。そして、そのために、MustとWill、CanとWillが重なる接点を見つけることを提案したいと思います。
その接点を見つけることができると、リーダーシップを発揮することができますし、会社で働くことが楽しくなります。