働き方改革〜残業時間削減に向けて(3)(コラム2017/04/25)

働き方改革〜残業時間削減に向けて(3)

“タイムマネジメントで残業をなくす”
 残業時間を削減するポイントは大きく2つあり、「ムダな仕事をやめる」「タイムマネジメントを行う」ことです。前者は前回のコラムで紹介しました。今回はタイムマネジメントをシンプルな形で紹介します。
 意識の問題として、仕事は足し算で捉えて、完了した時間が終業時間とするビジネスパーソンが多いものです。これでは仕事に対する工夫や効率化が見られず、残業の常態化につながります。本来仕事は納期から逆算してスケジュールを立て、年→月→週→日の流れに沿って当日やるべき仕事を時間軸でコントロールすべきものです。このやり方は仕事の足し算でなく、引き算で組み立てられたものです。今日の仕事スケジュールが決まっているから、残業が発生しない仕組みなのです。イレギュラーな仕事が入ったとしても、ぎっしりとスケジュールを埋めずに2〜3割余裕時間を空けておけば対応できます。
 他にスケジュール管理が上手くいかない要因として、時間の見積りの甘さもあります。各業務はきちんと分単位で記録することが重要です。時間を記録することで、優先順位のミス、段取りの不足など改善点がわかり、次回の仕事に活かせます。これにより仕事の効率化が進み、時間短縮のノウハウを蓄積できます。個人のものとしてでなく、部署や会社全体で改善活動を推進し、これらのノウハウは共有します。
 スケジュール管理は人それぞれにあり、自分にあったやり方でやればいいものです。但し、手帳、PC、スマホのアプリなどツールは一つにまとめることです。複数で管理すると、記入漏れや約束忘れなどのミスを生じるからです。ツールは出来るだけ見える化して、業務完了後に/を引いたり、チェックマーク記入したりすると、達成感があり仕事の意欲も向上します。
 スケジュールでやるべき仕事を記録しておけば、思い出したり、次の業務は何をしたらいいかなど考えずに済み、ツールの見える化によりシームレスで仕事を処理できます。締切時間を把握し、仕事を連続的に処理することで残業をなくし生産性向上を実現するのです。

 加えて業務にどれだけ集中できるかで生産性が決まります。ビジネスパーソンの生産性を向上させるためのノウハウを紹介します。
①時間帯別にナレッジワーク、ルーティンワークを振り分ける
 ここで重要なのは、生産性が上がるタイミングを押さえることです。たとえば一日の間では、朝から午前中がベストなタイミングだと言われています。企画書づくりや資料分析等の「ナレッジワーク」は午前中に充て、午後はルーティンワークに充てる、といった工夫をすると、進みが格段に速くなります。
一方、朝一番に何をするかという点も重要です。スタートダッシュとして滑り出しを良くすることも必要ですから、いきなりハードすぎる仕事をするのも考え物。素早くできることや得意なことを最初に行なって勢いをつけてから、ナレッジワークに移ると良いでしょう。

②メールチェックのルール化
 仕事のできる人のキーワードは「同質化」。複数のタスクを同時並行的に進めるより、一つひとつの仕事に集中するほうが生産性は上がります。そこでお勧めしたいのが、メールを見る回数を限定すること。返信に追われたり、その都度発生する用事に対応したりしていると、業務が細切れになり、集中力も途切れます。いったん途切れた集中力は、取り戻すのに15~20分かかると言われます。メールチェックは「朝・午後一時・夕方」など、1日3回程度に決めておくと良いでしょう。

③メリハリをつけてリズムよく仕事を処理する
 仕事のできる人は、休憩も大事にしています。集中すべきときは集中、力を抜くべきときに抜く、といったメリハリをつけているのです。休む間も惜しんで、デスクで昼食を摂りながら作業を続ける人がよくいますが、これでは午後の余力を失ってしまいます。
上手な休憩の秘訣は、「脱マンネリ」。席を立って洗面所に行くなら、ときには別のフロアに行ってみる。ランチに行くなら毎日同じ人とではなく、別の部署の誰かを誘ってみる。このように場所や人を変えると、脳が触発されます。

④スキマ時間を活用する
 スキマ時間を上手に使えるか否かも、差がつくポイントです。ここで役に立つのは、スキマ時間専用のタスクを用意する習慣です。「5分かかる仕事」「10分かかる仕事」「15分かかる仕事」と3種類ほど用意して付箋に書き、目につくところに貼っておけば、「電話の折り返し待ち」などの突然のスキマ時間もムダにせずに済みます。

 時間の使い方は一辺倒のやり方でなく、このように「タイムマネジメント」「メールチェックのルール化」「メリハリをつける」「スキマ時間の活用」などで、自分なりに工夫して手順と段取りで取り組んでいきましょう!

 

働きがいのある会社とは?(コラム2017/04/01)

働きがいのある会社とは?

企業と社員との望ましい関係とは、どのようなものでしょうか?

かつては、「ロイヤルティ(Loyalty)」という言葉で表現されていた両者の関係ですが、最近は「エンゲージメント(engagement)」と表現されるようになりました。
「ロイヤルティ」を日本語に訳すと「忠誠心」、「エンゲージメント」は「約束」、
どちらも顧客とブランドの関係を表すマーケティング用語を、企業と社員の関係を表す言葉としても用いるようになったものです。

ロイヤルティはステークホルダーから企業に向けられた一方向的な信頼や関係の強さですが、
エンゲージメントは双方向的な信頼や関係の強さを意味しており、協働してブランドを創り上げることを表しています。

そして、企業に対する社員のエンゲージメントが高まると、仕事に誇りと責任を感じ、自律的に考え、行動するようになるため生産性が向上します。

Great Place to Work(R)(以下、GPTW)は、毎年、「働きがいのある会社」ランキングを発表しています。
※2017年度のランキングは、こちらで閲覧できます。
http://special.nikkeibp.co.jp/atcl/NBO/17/gptw0221/ranking/

GPTWは、「働きがいのある会社」調査結果を分析し、ベストカンパニーに選出されている企業の取り組みから3つのポイントをまとめて発表しています。

◆働きがいのある会社が実践している3つのポイント

ポイント1 働く「時間」の選択肢を増やす
残業時間の削減やフレックスタイム制の導入などに加え、1日3~4時間といった超短時間勤務制度を採用する企業も増えてきています。
こうした制度は、育児休暇や介護休暇からの復帰を支援する制度としても活用されており、特にキャリアの断絶を防ぐことに高い効果があります。

ポイント2 働く「場所」の選択肢を増やす
在宅勤務を導入するだけでなく、制度を利用しやすい職場の雰囲気づくりが大切です。

ポイント3 経営層が職場風土改革に本気で取り組む
ワークライフバランスに対する意識改革のために、経営層から従業員に対し、会社のビジョンや方針と共にワークライフバランスを重視する思いや考えを伝えており、中には、従業員本人だけでなく、従業員の家族に対して、ワークライフバランスを推進することを宣言する手紙を送付している企業もあるようです。

エンゲージメントを高める要素は、人事制度や雇用条件だけでなく社員に対する信頼と尊重、人間関係や風通しの良さ、権限委譲の度合いなど様々あり、GPTWでは「働きがいを高める9つのエリア」としてまとめています。

※「働きがいのある会社」ランキングレポートでは、9つのエリアのベストプラクティスを紹介しています。

ランキング上位の企業は、制度づくりだけでなく、社員との対話や経営参画の場づくりを通して、長い時間をかけて風土改革を行っています。

働きがいのある会社は一朝一夕には実現しませんが、経営層の本気が社員に伝わることにより、社員の信頼と誇りが醸成される結果、自律性・自発性が高まり、創意工夫の生まれる魅力的な職場に変わって行くのではないでしょうか。

ビジネスプラスサポートでは、社員が参画する現場改革を通した働きがい向上をご支援しております。
どうぞお問い合わせください。

働き方改革〜残業時間削減に向けて(コラム2017/03/23)

働き方改革〜残業時間削減に向けて:その1

連合(日本労働組合総連合会))の「労働時間に関する調査(2015年1月16日発表)」によると、平均残業時間は一般社員20.5時間/月、課長クラス以上28.4時間/月です。
その残業の原因は図表①の通りです。
図表①「残業の原因」

出典:連合(日本労働組合総連合会)(http://www.jtuc-rengo.or.jp)「労働時間に関する調査」 2014年10月31日〜11月5日の6日間にわたり、20歳〜59歳の男女雇用労働者(正規労働者・非正規労働者)3,000名の有効サンプルを集計

残業の原因の上位3位までの回答は、
「仕事を分担できるメンバーが少ないこと」53.5%、
「残業をしなければ業務が処理しきれないほど、業務量が多いこと」52.6%、
「職場のワーク・ライフ・バランスに対する意識が低いこと」23.7%、
であり、これらを解決できれば残業の約7割を削減できます。

では、どうすれば残業を減らすことができるのか、図表②が回答者の対策となります。
図表②「残業削減の対策」

(出典)図表①と同じ
この対策を受けて、具体的な実施事項をピックアップしました(図表③)。特に間接部門において、多くの企業では業務の棚卸しがなされておらず、業務単位での標準時間が決まっていないのが実情です。タイムスケジュールもない状況で残業を削減する行為は場当たり主義と同じです。対策における上位2項目は正に部署別、業務単位別の時間管理がなされていないことが残業の要因になっているからです。ここにメスを入れることが残業削減のキーポイントとなるのです。

図表③「残業削減の具体的実施事項」

また、本来の仕事とは付加価値(売上高−コスト)を生み出すことであり、付加価値のない仕事はやめる必要があります。
例えば付加価値のない、ムダな仕事を列記すると、
・ 目的や意味のない会議やミーティング
・ 会議のための資料作成
・ 活用されない資料の作成
・ 同じメールを何回も見る
・ モノ探し、ファイル探し
・ データ入力
・ 決裁までの人数が多く、責任の所在がわからない
・ ITでできる仕事を手作業でやる
・ 指示がないと次の業務ができない
・ やり方が人によってバラバラ
・ 何回も確認の電話をする
など、いくつも挙げられます。

以上から生産性向上の最も有効な策が見えてきます。
それは、
1. タイムマネジメントを行うこと
2. ムダな仕事をやめること
の2点です。生産性向上とは、コスト(残業やムダ)を減らし、その余剰となった時間や資金を売上げ向上のために投資することです(図表④)。経営課題が困難になればなるほど、シンプルに本質を捉え、解決することが求められているのです。
※「生産性の公式」

働き方改革への提言(コラム2017/03/10)

働き方改革への提言

昨年8月、安倍首相は働き方改革を「最大のチャレンジ」と位置づけ、加藤勝信氏を新設の「働き方改革担当相」に任命し、関係閣僚と労使の代表、有識者が顔を揃える「働き方改革実現会議」を発足させました。
政府は「ニッポン1億総活躍プラン」として、「名目GDP(国内総生産)600兆円」「希望出生率1.8」「介護離職ゼロ」の3つの目標を掲げています。
※ 参照:名目GDP 504兆円(2016年),出生率1.5(2015年),年間介護離職者約10万人(2015年)

働き方改革が声高に叫ばれるのは、日本の成長と分配の好循環を実現するためです。
そのシナリオとは、
① 現状:人口減少+少子化+高齢化

② 子育て世代の男女や高齢者の就労促進

③ 働き方を見直し、労働生産性を向上

④ 消費の拡大

⑤ GDPの上昇

⑥ 出生率の改善(最終目標出生率2.1で人口が9,500万人で安定).
というものです。

首相は「働き方改革は、社会問題であるだけでなく、経済問題です」と昨年9月の実現会議の初会合で強調しました。改革のテーマは9項目あり、方向性として「労働生産性の向上」と「ダイバーシティ経営の実現」が主軸となり、働き方改革はワーク・ライフ・バランスの実現につながります(下図参照)。

※「働き方改革9項目」をベースに作成。

以上の政府主導の働き方改革は、人口減少に伴う人手不足から長時間労働や年功序列型賃金などの日本型雇用慣行の弊害により、企業は待ったなしの改革として迫られています。1)非正規雇用の処遇改善、2)賃金引上げ、3)長時間労働の是正は労働生産性の向上からもたらされます。
公益財団法人 日本生産性本部によると、
「2014 年度の日本の名目労働生産性は 770 万円であり、名目ベースでは上昇したが、変動を加味した実質(-1.6%)では前年度から2.8%ポイント低下し、5 年ぶりのマイナスとなった。」

出典:「日本の労働生産性の動向」2016年度版 公益財団法人 日本生産性本部

「国際的にみてみると、就業1時間当たりの日本の労働生産性は41.3ドル(4,349円)。OECD 加盟34カ国の中では第21位であり、2005年から21位の状況が続いている。」
としています。上記の労働生産性の推移と、この国際比較での順位の停滞を見る限り、日本の労働生産性は伸びがないことから働き方に本腰を入れていないことがわかります(図4参照)。

出典:「労働生産性の国際比較」2016年度版 公益財団法人 日本生産性本部

会議にムダな資料が多かったり、メール処理が全社的に統一されていなかったり、通勤に片道1〜2時間かけたり、一般的な会社には数多くのムダがあります。長時間労働の対策として、よく挙げられる「ノー残業デー」等の小手先のやり方では決してなくなるものではないのです。
「労働生産性の向上」「ダイバーシティ経営の実現」は働き方改革において真っ先に取り組むテーマです。従来の働き方をゼロベースから見直し、管理職の意識改革や企業の制度改革を行うことが求められています。弊社のコラムでは前回に引き続き、これらのエッセンスをシリーズにて伝えていきます。

「当たり前品質から魅力品質へ」(コラム2017/02/20)

「当たり前品質から魅力品質へ」

企業にとってホームページは企業情報を提供する、販売・マーケティングにつなげるなどの機能を持っています。例えば各々の自動車メーカーのホームページを閲覧すると、商品である自動車の動力性能、ドライバビリティ、安全性、デザインなどの特徴を訴求しています。メーカーによってはハードである車に対して、車の楽しみ方、用途、趣味としての広がりを持たせたソフトの提案も行っています。ホームページをより効果的に運用するために様々な工夫を凝らしているようです。

中でも目を引くのがマツダのホームページです。それぞれの車の開発の経緯、生産にまつわるエピソード等を物語として顧客に伝えているところに特徴があります。その物語の数々が顧客のこころを捉えるのです。その物語のひとつ―「ロードスター RF 開発物語 Vol.4『生産工場の創意工夫が切り開く、設計&デザインの自由。』車両組立技術者 中村 貴樹」のインタビュー記事に目を奪われました。
マツダでは、正常に機能することや、異音や振動の発生を防ぐクルマづくりを“当たり前品質”と呼び、そのクルマらしさを特に力を込めて表現したいピンポイントの作り込みを“魅力品質”と呼んでいます。品質を二つの側面から切り分けて、「魅力品質」という言葉が能動的品質のように受け取れるのです。「当たり前品質」がミスのない品質であり、最低限保障されるべき品質です。

多くの企業が製品やサービスに対して品質の正常化を目標としている中で、もう一つ上の品質―魅力品質を掲げている企業はどれだけあるのかわかりません。生産に従事する社員にとって、会社が掲げる目標としてのテーマ(=言葉)によって、受動的となるやらされ感なのか、能動的になる自発性なのか、分かれると思うのです。マツダではデザイン、生産など各部署が一体となって取り組んでいるところに強みがあります。社員を動かすには全員が目指すべき目標より、その目標の背景にある考え方、納得感、行動を促す力があるのかどうかで決まるのです。朝礼で経営理念や経営目標を唱和することも大事なことかもしれませんが、人を動かすものは何かを突き詰める方が理にかなっています。経営幹部が現場に行き、現場を見て、現場と話し、実際どんな働き方をしているのか知ることから始めてみてはどうでしょうか。なぜなら企業体質は現場そのものにあるからです。

以下はマツダHPの抜粋です。

熱い創意をそのままにお客様の元へ届けるために。
難題に受けて立つ、という志

ロードスター RFが、生産現場にとって前例のないほど難しい1台になることは、その構想が決まった時点ですでに明らかでした。
「全体のイメージが示された開発初期の段階で、そもそも造れるのか、と思えるほどたくさんの課題が浮かび上がりました。そこで私は、いくつかの提案を持って、デザイナーやメカニズムを設計するエンジニアの下へ足を運びました。」

「例えば、ドアガラスの形状が、ソフトトップモデルでは後端が丸くデザインされているのに対して、RFでは角張っています。効率的で確実な生産のためにはソフトトップモデルと共通化することが望ましいと、私は伝えました。ところがデザイナーからは、美しいデザインのポイントであるだけでなく、良好な視界の確保等々、深く熟考された末に導き出された唯一無二のカタチで、絶対に妥協できないという熱い言葉が返ってきました。」

「生産に伴う苦労と、熟考されたお客様のための創意のどちらを採るのか、という話です。事情が分かった私は、もちろんうなずきました。やりましょう! そのための方策を創造するのが、私たちの仕事ですから。」
そしてロードスター RFの実現に向けた最大の難関は、美しいデザインと複雑なリトラクタブルハードトップの開閉メカニズムの両立にありました。

「デザインと機能の両面から徹底的に突きつめられたリトラクタブルハードトップの設計図を見たときに、これは尋常でないと直感しました。隣り合う部品同士が、ハードトップの開閉状態に係わらず、常に狭い空間の中にびっしり並んでいるんです。わずかでも組み付けがずれると、開閉動作の途中で干渉する可能性があります。

マツダでは、正常に機能することや、異音や振動の発生を防ぐクルマづくりを“当たり前品質”と呼び、そのクルマらしさを特に力を込めて表現したいピンポイントの作り込みを“魅力品質”と呼んでいます。ロードスター RFのリトラクタブルハードトップは、当たり前品質を実現すること自体に極めて高い技術力が求められ、そしてそれがそのまま魅力品質につながる雰囲気にあふれていました。

もし、たった1台をたっぷりの時間と何名もの組み付け職人で仕上げることが許されるのであれば、ハードルはそれほど高くないでしょう。けれどもマツダの製造ラインは、デミオからロードスターにいたる、あらゆるモデルが渾然一体となって流れてきます。そのような製造ラインの流れを滞らせることなく、何千、何万台というロードスター RFを高品質のまま安定的に造らなければならないということです。」

「どうするか? 知恵を絞って絞って、絞りきる。知恵と努力は、道を開きます。私に残された道は、それしかないんです。なぜなら私は、エンジニアやデザイナーの下に足を運んだ挙げ句彼らに説き伏せられてしまった、というわけではありません。彼らの熱さに、これは自分たちもやらなければ、と突き動かされたという感じなんです。よし、受けて立ってやるって決意したんですから、やらんわけにはいかんでしょう。」
(参照:http://www.mazda.co.jp/beadriver/experience/rf_develop/04_2/ )

熱く燃える27歳が奔走するその理由は?

本格的な量産を目前に控えたこの日、中村は額に汗を浮かべて、待ち合わせの時間ギリギリに駆け込んできました。訊くと、たった今まで工場で生産の手順を練りあげていたのだと。朝から戦いのまっただ中にいたのだと、そう教えてくれました。

「そんな毎日を過ごしているうちに、最近おもしろい感覚を覚えるようになってきたんです。あれ? 自分はマツダの社員なのに、マツダのために働いてるという感覚が薄れてきたなと。この部分はこういう手順で組み付けないといけないんだ!と自分やメンバーを鼓舞しているときに、頭の中にあるのはお客様のことばっかりになってきたんです。」

「ここで造りあげたクルマをお客様に迎えていただくとき、どんな表情を見せてくださるんだろう。きっと、笑っておられると思うんです。そして、長く楽しんでいただいた将来のある日、いったいどんな表情を見せてくださるんだろう。そのときも、きっと笑顔であってほしい。それを実現するのが、私の仕事じゃないかと思うと、私の頭の中にあるのは、マツダよりもお客様のことばかりになってきてるんです。格好を付けてるわけじゃなく、これが27歳の今の自分の本音なんです。」
(参照:http://www.mazda.co.jp/beadriver/experience/rf_develop/04_3/ )

生産性を上げるアイデアその3 「身近にスマホがあると、集中できない」(コラム2017/02/10)

「身近にスマホがあると、集中できない」

認知心理学の専門の河原純一郎・北海道大特任准教授の実験では,スマホがそばに置いてあるだけで、「メールが来ないか」などと気を取られ、注意力が低下されることが確認された。また、脳科学者の川島隆太・東北大教授がスマホを操作中の大学生約20人の脳の血流量を測定したところ、論理的な思考を行う大脳の前頭前野が「眠っているような、ボーッとした状態」になっていたという(読売新聞2017年2月1日号)。

大変興味深い新聞記事です。これらは誰もが経験していることではないでしょうか。意外にオフィスの現場では、デスクの上にスマホを置いて仕事をしているケースをよく見かけます。会社でスマホを貸与している場合もあり、仕事で使われているのか、私用で使われているのか、一見しただけではわからない状態です。
「情報機器等の使用」について、きちんと対処している会社の就業規則では、「会社のパソコンや会社が貸与した携帯電話を私的に使用しないこと」「タブレット型コンピュータやスマートフォン(個人所有のもの)を業務で使用しないこと」というように定めています。情報漏洩が予測される職場では持ち込み禁止になっている場合もあります。一般的な会社でスマホの私的使用を禁じているとしても、デスクの上に置いているだけでは違法にはなりません。しかし集中の妨げとなり、業務効率が落ちたり、業務上のミスが生じていれば放置するわけにはいきません。きちんとスマホ使用については具体的に就業規則を決める必要があります。

スマートフォンを所有する15歳~59歳の男女553人を対象に、スマートフォン依存について聞いたところ、「かなり依存している」が18.8%、「やや依存している」が52.6%と合わせて71.4%の人がスマホ依存の自覚があることがわかった。年代別で見ると、10代が21.6%、20代が26.4%、30代の21.8%がスマホに「かなり依存している」と自覚している結果となった(下図参照:MMD研究所調査 https://mmdlabo.jp/investigation/detail_1563.html)。

またMMD研究所によると、スマートフォンに接触している時間では「2時間未満」が最も多く20.3%、次いで「3時間未満」が17.9%、「1時間未満」が17.0%であり、「2時間〜3時間未満」が2割弱という結果に驚きます。
現代はあまりにもスマホ依存のライフスタイルです。会社内のスマホ使用について、就業規則で定めることも重要ですが、一日の貴重な時間に対しての教育も現代では不可欠です。時間を有効に使うには仕事もプライベートも共通しているからです。業務上、プライベートの部分に踏み込むことは出来ませんが、時間の有効活用については共通するものであり、スマホ依存症で寝不足になっていれば業務に支障を来します。現代では「スマホを制する者は時間を制す」につながっていると思えるのです。

生産性を上げるアイデア その2(コラム2017/01/26)

小学校の教育現場から学ぶ「眠育」

茨城県石岡市立小桜小学校では、眠育の一環として午睡タイムを設けています。「これから午睡タイムを始めます。カーテンを閉めて電気を消しましょう」。週2日、午後0時55分に全校生徒96人が一斉に机にうつぶせになり、昼寝をする。同校が昼休みに15分間午睡タイムを設けたのは2015年9月。児童からは「掃除や午後の授業がすっきりとした気持ちで受けられる」と好評だ。教師も「児童の集中力が増した」と効果を実感しているという(2017年1月13日の日本経済新聞朝刊)。
人間の生理的メカニズムとして、1時から2時ごろにかけては眠るように本能づけられています。眠気を防止するにはデスクの上で昼寝をすることです。15分間の睡眠で2〜4時間程度の眠気を防止する効果があります。午睡したい人に対し、全社的な取り決め事項として「消灯する」「静かにする」等の対策も必要です。
昼寝をすることにより、
①眠気がなくなり、集中力を持続できる。
②疲労回復効果は、通常の睡眠に比べて約3倍。
③ストレスを解消する。
④ミスが減少する。
⑤睡眠は創造力、記憶力を高める。
の効果があるとされています。
よりよい睡眠と生活習慣の向上につなげる眠育は大人も学ぶべきものです。特にスマホ、TVでの夜更かしが原因で仕事上のミスは必ず発生します。勤務時間帯以外の時間の使い方に対する教育も、押しつけにならない範囲内で研修の場として設けることも一案です。プライベートの時間が充実することで、仕事の生産性も同時にアップするからです。生産性を上げる特効薬が「午前の勤務時間帯を増やす」「午睡タイムを設ける」「生活リズムの改善」なのです。
(例)企業における「午睡タイム」の導入

書籍「早く帰りたい! 仕事術 3時間分のムダがなくなる30のコツ」藤井美保代

「やることが多くて、1日が24時間じゃ足りない! 」、「慢性的な人手不足で仕事の負担が大きすぎる」、「忙しすぎて仕事が雑になってしまう」、「目の前の仕事に精一杯でプライベートが後回しになっている」・・・・・・そんな悩みを抱える方は多いもの。
しかし、いざ1日の使い方を見直すと、毎日およそ3時間分のムダが隠れている、そういうのは業務改善のプロである著者。あなたが早く帰れない原因は、そんなムダにあったのです。
本書では、時間の使い方に着目して、徹底的にムダを減らす方法を紹介します。なんとなくやってしまう悪い習慣を変え、効率的な仕事に変える方法を、具体的なステップに分けて見ていきましょう。
30個のコツを徹底すれば、仕事のムダがなくなり、「自分の時間」が手に入ります。
出版社:日本能率協会マネジメントセンター 価格:1,400円(税別)
発売日:平成29年1月28日
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マンスリーレポート2016年12月号

マンスリーレポートPDFダウンロードはこちら

50代からのキャリア自立【2】
~転機を乗り切る戦略~

◆貢献意識を持ち、自身の存在価値を高める

50代以降は、いくつかの転機が訪れます。
仕事の面では、役職定年による役割変化、定年再雇用による勤務体系の変化と報酬ダウン、定年退職、セカンドキャリアスタートという転機が、また、私生活においては、自身の健康問題、親の介護問題による生活の変化が気になる時期です。
転機においては、先が見えないことが最大の不安要因になります。役職定年前後の社員からは、「自分の立ち位置がわからない」という声が聞かれます。「立ち位置」とは、役割や周囲からの期待を指すようです。役職定年を迎えたことで「お役ご免」という意識が芽生え、最低限のことしかしなくなる方もいます。
一方、会社としては、役職定年後、再雇用後も、会社に居る限りは存在感を発揮して欲しいと願っています。会社からの期待と50代社員の意識のズレが、中高年社員マネジメントの難しさを生んでいるようです。

50代社員が自身の存在価値を高め、働くモチベーションを持ち続けるためには、以下2つの対策が必要です。
1. 周囲のニーズ(仕事の需要)を自ら探し、フットワークよく動く(周囲への貢献意識)
2. 定年後の働き方、暮らし方のイメージを描き、少しずつ準備を始める(「先」が見えるようにする)

◆転機を乗り切る戦略を立てる

<転機の理論>として有名なシュロスバーグ理論では、下図の3つのステップで転機を克服する戦略を立てます。
※ナンシー・K・シュロスバーグ 元「NCDA」(全米キャリア開発協会)会長
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ステップ1の「変化を見定める」では、具体的に何がどのように変わるのかを書き出します。定年後の変化が気になるようなら、在宅時間、行き場所、報酬、人との付き合いなどが、どのように変わるのかを明示します。
ステップ2では、転機を乗り切るリソースをリストアップします。例えば、行き場所を作りたいのであれば、ボランティア、趣味の集まり、仕事先の確保など、行き場所の候補をリストアップします。
最後に、ステップ3では、転機を乗り切るために必要なリソースを獲得・強化するための具体的な行動計画を立てます。避けられない変化を乗り切るためには、行動を起こし、変化を生かすことに時間を使うことが大切です。
キャリアの転機は偶然に訪れることが多いのですが、幸運は、準備と偶然が重ならないと起こりません。
在職中の貢献意欲を求めるためにも、セカンドキャリアに必要な準備を考え、行動することが必要です。そのことにより、多少は先が見えるようになり、不安が低減し、モチベーションを下げることなく働くことができます。