どんな社員も成長させる<若手社員の育成法>(コラム2017/06/05)

どんな社員も成長させる<若手社員の育成法>

最近、新入社員ではなく、OJTリーダーや先輩社員が5月病になるケースがあるようです。指示や教えたことを理解できない新入社員へのイライラを募らせてしまうためです。
そして、その結果、育成を諦めて放任する、感情に任せて叱責し、新入社員を離職させてしまうこともあります。

仕事を理解するスピードが多少遅くても、指示の理解度が低くても、素直、まじめ、一生懸命に学び、自身の行動を改善する姿勢があれば成長します。
しかし、自分なりの判断基準や持論にこだわり、指示やアドバイスを素直に受け止めないと、学びの機会と量が減り、成長スピードが遅くなってしまいます。

スタンフォード大学・心理学教授のCarol Dweck(キャロル・ドゥエック)博士は、このような状態を<Fixed mindset>(固定された思考態度)と呼びます。
博士の研究によれば、<Fixed mindset>を持つ人は、「人の能力や創造性は天性のものであり努力しても変わらない」と考えます。そのため、失敗を恐れ、挑戦を避けます。
一方、<Growth mindset>(成長する思考態度)を持つ人は、努力すれば成長することを信じているため、「学びたい」という意欲から、すべての行動が始まります。
そのため、挑戦を喜んで受け止め、逆境にあっても粘り強く耐えます。
そして、博士は、<Fixed mindset>を<Growth mindset>に転換できることを証明しています。

人財育成に当たる人は、自身が<Growth mindset>の持ち主であることが求められます。その上で、<Fixed mindset>の若手社員を育成する際には、相手の成長を信じ、粘り強く係わり、育成方法を工夫していただきたいものです。

<Fixed mindset>の若手を育成する際の留意点は、以下のとおりです。

・わかりやすい指示・説明と確認
・スモールステップで成功体験を積ませる
・適切なフィードバック
・ポジティブ表現を使う
・努力により大きく能力が伸びた体験談(事例)を話す

 

◆わかりやすい指示・説明と確認
忙しい現場では、指示や説明が丁寧とは言えません。
理解力の高い若手社員であればそれでも問題ありませんが、<Fixed mindset>を持つ社員は、自分なりの解釈をする傾向がありますので注意が必要です。
段階を踏んで話し、メモを見ながら復唱させ、意図どおりに伝わっているかどうかを確認してください。

◆スモールステップで成功体験を積ませる
  業務全体を説明して一気にやらせるのではなく、まず、確実にできそうな一部をやらせます。そして、指示した業務が完了した後に次のステップの指示を出します。
ダメ出しばかりではなく、「丁寧にやってくれて助かった」「早かったね」などのフィードバックと同時に改善点を指摘しましょう。

 

 

 

 

◆適切なフィードバック
フィードバックとは、ある行動に対する評価を伝えることです。
良かった点と改善点、次の段階に進むための留意点をセットにして伝えましょう。
一方的なフィードバックではなく、最初に本人に振り返りをさせ、その後に、こちらのフィードバックを伝えます。
そして、フィードバックは、行動の直後に行うと効果が高まります。

◆ポジティブ表現を使う
若手社員、特に新入社員に対しては、どうしても、できていないことを指摘する場面が多くなります。課題を向き合うのは大切なことではありますが、<Fixed mindset>を持つ社員は、課題の指摘を自分自信にNGが出されたと受け止め、学んで成長することを諦めてしまいます。また、脳は、否定形を理解しづらいと言われています。
課題を伝える時は、「●●を変えたらもっと良くなるよ」「●●はできているから、次は○○○に挑戦しよう」などとポジティブ表現で話します。
また、注意を促したい時も、「期限に遅れないよう提出すること!」というより、「○月○日の何時までに必ず提出」という表現のほうが理解されます。

◆努力により大きく能力が伸びた体験談(事例)を話す
<Fixed mindset>を持つ社員は、成功事例を聞くと「あの人は、元々能力が高いから私とは違う」と捉える傾向があります。
成功事例から学ぶことは大切ですが、うまくいったことだけでなく、「こんな苦労があった」
「以前は、○○さんもダメ出しをされることが多かった」など、課題を克服して成長した事例を話すほうが学びにつながります。


社員の成長スピードやマインドセットには多様性があります。
優秀だから伸びるのではなく、貪欲に学ぶ姿勢があるから伸びるし、その姿勢を作るのが育成を担う者の使命、と考えたいものです。

働き方改革〜「テレワーク(2)」(コラム2017/05/31)

働き方改革「テレワーク(2)」〜企業事例

テレワークは弊社においても、遠距離通勤や移動時間ロスのムダを解消し、社員のワークライフバランスを実現するために実施しています。Web上で作業できることは、出勤せずとも在宅勤務で遂行できます。
テレワークの導入目的は、

① 社員のワークライフバランスの向上
② 人材の確保
③ 育児介護期の社員の勤務促進
④ 遠隔地での雇用の実現
⑤ BCP(災害時等の事業継続)対策
⑥ 生産性の向上
⑦ コスト削減

です。
企業の利益の源泉はもちろん、モノやサービスですが、それを生み出すのは人財です。モノやサービスの付加価値向上にはどれだけ人財の持つ能力を最大限に発揮するかが求められています。働き方改革は企業活動を永続的に行うためにも必要不可欠です。その有効な手段がテレワークであり、特に①〜④の目的達成が企業経営を強固にするものです。

わが国ではテレワークが導入期でもあり、トライアルで始める企業が増え始めています。そこでテレワーク導入をうまく進めている企業の事例を2社紹介します。
(1) ユニリーバ・ジャパン
「WAA」は働く場所・時間を社員が自由に選べる制度です。
• 上司に申請すれば、理由を問わず、会社以外の場所(自宅、カフェ、図書館など)でも勤務できます。
• 平日の6時〜21時の間で自由に勤務時間や休憩時間を決められます*1。
• 全社員が対象で、期間や日数の制限はありません*2。

「WAA」の導入により、たとえば次のような働き方が可能になります(図1)。

図1

■ 導入の背景
ユニリーバは、ダイバーシティ(多様性)の推進を重要な経営戦略の一つと位置づけています。すべての社員が自分らしく働きながら、一つのチームとして最大限能力を発揮することが、ビジネス成長の基盤だと考えているからです。そのため、日本でも早くから採用・昇進の際の機会均等を徹底するとともに、多様な働き方ができる制度・環境の整備を進めてきました。在宅勤務制度やフレックスタイム制度は、性別や年齢を問わず、多くの社員に活用され、ユニリーバ・ジャパンの高い女性管理職(課長職以上31%、2016年6月現在)にも貢献しています。
(参照:ユニリーバ・ジャパンHP
https://www.unilever.co.jp/news/press-releases/2016/WAA.html)

(2) 日本IBM
■ One IBM
IBM はグローバルに加速するビジネスのスピードと競争環境の変化に対応するため、「One IBM」というスローガンを掲げ、世界140社以上ある法人のビジネスプロセスを一つに統合した企業形態である「Globally Integrated Enterprise( GIE、地球でひとつの企業)」の実現に向けて、経営変革に乗り出したのです。GIE によって、各現地法人の機能を統合し、「経営資源の最適化」を推進したために、社員は国を超えて仕事をするようになりました。
■ 導入の背景
IBMにとってのワークスタイル変革は、One IBMを実現するために場所と時間の柔軟性の確保が必要となったのです。
■ ワークスタイル変革のポイント
① 目的を明確にする
One IBMとなって仕事をするようになると、コミュニケーションをとる相手と時差や勤務場所の違いがあるため、深夜や早朝に業務を行ったり、Web 会議などで打ち合わせを行う必要が出てきます。それに対して IBM は、社員の勤務時間と勤務場所に柔軟性を確保することで対応しました。ここで留意すべきことは、企業がワークスタイル変革を考える際には、「ワークスタイル変革ありき」ではなく、会社としての目的をまず明らかにする必要があります。目的を明確にして、そのために制度やシステムを整備する、そういう順序で進めることが重要です。
② コミュニケーション基盤は皆が日常的に利用できるようにする
会えない社員とスムーズに仕事ができるようにするためには、コミュニケーションおよびコラボレーション基盤の整備が大変重要です。IBM では現在5種類のコミュニケーションツールを使って仕事をしています(図2)。


こうしたコミュニケーション・コラボレーション基盤は日常的に社員全員が利用することがポイントです。特定の事業部や役職者、在宅勤務者に限ってしまうと、使い分けが煩雑になり、蓄積される情報が限定され、やがて使われなくなってしまいます。皆が日常的に利用できるようにすることが極めて重要です。

③ 働く場所は仕事に応じて積極的に使い分ける
日本IBMでは現在、5種類のワークプレイス(働く場所)があります。

このように複数の選択肢が用意されており、社員には積極的に使い分けることが求められます。明確な目的意識を持って、毎日の仕事を自分で組み立て、どこで仕事をするのが一番効率的かを考える必要があります。仕事の内容は日々変わるため、上司が部下に指示するのは現実的ではなく、社員が自ら考え、使い分けないとうまくいきません。加えて、全社員に利用機会が公平に与えられることも重要です。そうでないと、テレワーク適用者が他の社員に気兼ねして、テレワークを使いづらくなってしまいます。

④ 自律的に仕事ができるように社員が意識を変える
日本IBM では、ワークライフバランスを重視し、人事制度を変えてきています。「仕事と生活のバランスへの考慮が必要」とした上で、勤務場所や勤務形態に柔軟性を認めるe-ワーク制度の推進やライフステージの変化をフレキシブルにサポートするさまざまな制度を通じて、社員のより良いワークライフバランスを促進しています。制度には、以下のものがあります。

勤務制度の運用では、会社よりも社員に多くのことが求められます。テレワークは自分一人で仕事をするため、結果を出すように自己管理が必要になります。IBM の経験上、自律的な仕事の仕方はキャリアが浅い場合には、かなり困難です。One IBMの変革を始めた当初はさまざまな試行錯誤がありましたが、10年以上経った今ではすっかり定着しています。その中で大きく変化したのが個々の社員と管理職との関係です。One IBM 以前は管理職が日常業務を管理し、業務目標を設定していましたが、現在はコーチングに徹しており、業務目標は社員と共に設定するようになっています。

■すべての出発点は会社を変えていこうという強い想いを持つこと
このようにワークスタイルを変えることによって、IBM の社員は効率的に仕 事ができるようになりました。例えば埼玉県の和光市に住んでいる社員が午後1時に四谷(東京都新宿区)でお客様と打ち合わせがあるとすると、以前は業務開 始時間に本社(東京都中央区)に出勤し、打ち合わせ後も本社に帰社していたため、通勤を含めて移動に約130分も費やしていました(図3)、しかし、池袋のサテライト・オフィスを使うようになってからは約70分で済み、約60分も移動時間を短縮できるので、明らかに一日の業務効率が上がります。

テレワークでは皆が利用できる機会と権利を持つ「公平性」や、災害時などの特殊な状況ではなく日常的に使う「慣れ」、諸制度や評価を含めたきちんとした「運用」が重要になります。これらを踏まえた上で、ワークスタイルだけでなく、経営戦略や企業文化、経営理念なども含めて総合的に見直していく必要があります。同時に社員から経営者まで全員が、自らを変える、会社を変えるという意志をもつことが重要です。
(参照:「IBMのテレワーク運用事例に見るワークスタイル変革のポイント」IBMコラボレーション・ソリューション)

この2社ともに働き方改革を経営戦略として位置づけており、単に手段だけが先行していないことに注目すべきです。目的意識が明確になればなるほど、目標達成は現実のものとなります。後日アップ予定の「テレワーク(3)」では実際の在宅勤務を上手く行っているビジネスパーソンの事例を踏まえて、在宅勤務のエッセンスをお伝えします。

働き方改革〜「テレワーク(1)」(コラム2017/05/18)

働き方改革「テレワーク」〜キーワードは「どこでもオフィス」

日本テレワーク協会によると、テレワークとは、情報通信技術(ICT)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことです。テレワークは働く場所によって、自宅利用型テレワーク(在宅勤務)、モバイルワーク(顧客先や移動中に、パソコンや携帯電話を使う働き方)、施設利用型テレワーク(サテライトオフィス勤務:勤務先以外のオフィススペースでパソコンなどを利用した働き方)の3つに分けられます。
一般的な勤務制度では、朝起きて身支度し車や電車などの通勤手段を使って、コストや体力、時間を費やして職場に赴きます。果たして全員が出勤する必要性があるのか問い直すことです。もし通勤にかける時間をなくして、在宅勤務に切り替えたら、企業にとっては通勤手当、職場スペースや光熱費等のコスト削減に加え、在宅勤務者は電話や雑談等の仕事中断がなくなり生産性が向上します。在宅による子育てと仕事の両立、家事の平行処理、そして家族との会話も増え、親の介護も可能になります。
もちろんメリットばかりでなく、企業の情報漏洩のリスク増加、労働時間の把握が困難、コミュニケーション不足による隔たりなどのデメリットもあります。但し、できない理由から在宅勤務をやらないのではなく、メリットの効果の方が大きいことに注目すべきです。
総務省「平成 27 年通信利用動向調査」によると、テレワーク(在宅勤務、サテライトオフィス勤務、モバイルワークを含む)を「導入している」と回答した企業は 16.2%で、「導入していないが、具体的に導入予定がある」と回答した企業と合わせても全体の2割程度です(図表 4-1-3-1)。一方、テレワークを「導入している」と回答した企業にとって、テレワーク導入効果は「非常に効果があった」と「ある程度効果があった」を合わせて約8割の企業が「効果があった」と回答しています。

これらからテレワークの導入は6社に1社程度ですが、テレワークの導入企業の多くが導入効果を認めています。総務省の「地方創生と企業におけるICT 利活用に関する調査研究」(平成27年)からテレワーク導入企業の実現した効果と導入時の課題を抽出すると、下表の通りとなります。
■ テレワーク導入企業の実現した効果と導入時の課題

総務省「地方創生と企業におけるICT 利活用に関する調査研究」(平成27年)によると、テレワーク導入企業の5割以上が生産性・業務効率の向上を実現し、通勤・移動時間の短縮はもちろんのこと、3人に1人の割合で社員のワークライフバランスを実現しています(上位3項目)。テレワーク導入時の課題の上位3項目は「情報セキュリティの確保」「適正な労務管理」「社員同士のコミュニケーション」です。
「情報セキュリティの確保」については、それぞれ官公庁のガイドラインがありますので、リンク先をご参照ください。
→総務省の「テレワークセキュリティガイドライン(第3版)」
http://www.soumu.go.jp/main_content/000215331.pdf#search=%27テレワークセキュリティガイドライン%27
「適正な労務管理」については、労働基準局から手引があります。
→厚生労働省労働基準局労働条件政策課 「在宅勤務での適正な労働時間管理の手引」
http://nagasaki-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/library/nagasaki-roudoukyoku/kijun/201203/tebiki-12032901.pdf#search=%27適正な労務管理+テレワーク%27
「社員同士のコミュニケーション」については、次のようなICTを活用することです。

①シンクライアント・システム:ユーザーが使用する端末の機能は必要最小限にとどめ、サーバー側で処理を行う仕組み
②スマホの内線化
③チャットツール(テキストチャット・ボイスチャット)
④ビデオ会議・Web会議システム
⑤どこにいても「一緒に仕事」ができるコミュニケーションツール

コミュニケーションではツールによる情報化だけでなく、どうコミュニケーションを図っていくべきかに注力すべきです。
その解決策とは、
・日報の活用:1日の活動内容を「日報」に記入、それを上司からトップに至るまで、「「報・連・相」をウエブ上で行い共有します。
・各メンバーがツール上で、「◯時まで無理!」「○の場所で打ち合わせ中」「16時帰社予定」など、スケジュールや居場所を知らせたり、拒否メッセージを表示したりして、現在の自分の状況をわかるようにすることです。これによりコミュニケーションが円滑に進みます。
・「居場所」確認ツールでメンバーがどこにいるのか確認できるようにします。メンバーがいる場所がわかれば、探すムダがなくなり、コミュニケーションの選択(会って話す/電話する/チャットするなど)が即判断できます。
・上司と部下は定期的に面談することも大切です。人事考課に基づき、目標設定、能力開発、教育研修などを実施し、業務の進捗状況の把握からサポートを行うことで、常にメンバーが必要とされていることを認識し、より前向きに業務に取り組めるようにします。

以上のことを念頭に置いて、テレワークはまず導入しやすい職種から始めると良いでしょう。適した職種は「営業」「研究・開発」「システム関連」「顧客サポート」「企画・調査」などが挙げられます。次回のコラムでは実際の企業の導入事例などを紹介していきます。

若手世代の特徴と育成の留意点(コラム2017/05/02)

若手世代の特徴と育成の留意点

公益財団法人日本生産性本部が主宰する「職業のあり方研究会」では、例年、その年の新卒入職者の特徴や就職・採用環境の動向などについて調査研究を実施し、命名を行っています。
平成29年度新入社員の特徴とタイプは以下のとおりです。

平成29年度 新入社員のタイプは「キャラクター捕獲ゲーム型」
(日本生産性本部プレスリリースより転載)
キャラクター(就職先)は数多くあり、比較的容易に捕獲(内定)出来たようだ。一方で、レアキャラ(優良企業)を捕まえるのはやはり難しい。
すばやく(採用活動の前倒し)捕獲するためにはネット・SNSを駆使して情報収集し、スマホを片手に東奔西走しなければならない。必死になりすぎてうっかり危険地帯(ブラック企業)に入らぬように注意が必要だ。
はじめは熱中して取り組むが、飽きやすい傾向も(早期離職)。

秋の意識調査 2016年12月発表
【過去最高】54.6% 条件のよい会社があればさっさと移るほうが得である
【過去最高】37.8% 自分には仕事を通じてかなえたい「夢」がある
【過去最高】86.3% 残業が少なく、平日でも自分の時間を持て、趣味などに時間が使える職場が良い
【過去最高】61.5% 会社の親睦行事には参加したい
【過去最高】84.1% 子供が生まれたときは、育休を取得したい

以前から指摘されてきたことですが、会社に対するエンゲージメント(愛着)が低下し、離職・転職に対する抵抗感が減少する傾向は、年々強くなっています。
しかし、こうした全体的な特徴に当てはまらない若手社員も存在しますので、育成に当たっては、先入観を持たず1人ひとりの特徴をしっかり考慮して対応することが重要です。
今回は、上記を前提に、現代の若手社員の主体性を伸ばす育成について考察します。

この数年、内定者研修、新入社員研修を通じて感じるのは、「正解を求める」傾向が強く、パターン外の課題に対応する力が弱いこと、「ワークライフバランスを重視し、仕事を楽しみたい」と考える若手社員が増えたことです。

正解を求めるが故に、曖昧なことに対して自ら一歩を踏み出さない(正解のわからないことに主体的に取り組んだ結果、失敗したり間違いを指摘されたりして傷つきたくない)、楽しく仕事をしたいが故に没頭するような働き方をしたくない、という意識が働くように思います。

仕事を楽しむのは大切なことですが、試行錯誤して困難を乗り越える段階を経て【楽しい】領域に到達するのであって、「最初から最後までわくわく楽しい仕事」は存在しません。ゲームのように最初は熱中して取り組み、飽きたら次の楽しいことに取り組むという姿勢では、仕事で成果を挙げる楽しみに到達することはできないのです。

そして、仕事の現場では、早期に主体性を発揮する社員を求めています。主体性を発揮することを躊躇する傾向がある若手社員と主体性を求める上司、先輩社員の間にはギャップが生まれ、双方にストレスが溜まります。その結果、早期離職という選択をする社員が増えているのは残念なことです。

しかし、「失敗を恐れず挑戦せよ!」という掛け声だけでは彼らを主体的にすることはできません。
では、どのように接すれば良いのでしょうか?

◆若手の主体性を伸ばし、課題への対応力を強化するには?
ここでは、3つの方法をご提案します。
1. 意識的かつ頻繁にフィードバックを行う
フィードバックとは、行動の具体的な評価を行動した相手に伝え返すことをいいます。フィード(Feed)の意味は食べ物を与える、つまり栄養を与えることを意味しますので、フィードバックは、相手の糧になる内容であるべきです。
単に褒める、叱るではなく、次の行動を改善することに資する内容であって欲しいものです。

2. 指示、命令、依頼する時は、背景(理由)を添え、実行後にフィードバックする
「明日までに●●業務を完了する」という指示の場合、なぜ明日なのかを伝え、他業務との兼ね合いを確認し、優先順位を考えさせます。
さらに、業務完了後にはフィードバックを忘れないようにしましょう。
褒めるだけでなく、完了した業務の質、要した時間、工夫などについて示唆を与える内容とします。改善が必要な場合は、こちらから一方的に話すのではなく、若手に考えさせる質問を行い、考える癖をつけることが大切です。

3. 質問により問題解決思考を鍛える
例えば、若手社員がミスをした時、どのように問いかけますか?
多くの方は「なぜミスをしたと思う?」と原因を問う質問をされるのではないでしょうか?確かに原因究明は重要ですが、他者から「なぜ●●したのか?」と問われると、多くの人は、自分が責められている気がして言い訳をしようとします。
「正解ではないことをすると自分自身に×印が付く」という意識が強い若手社員には、特にこの傾向が強く見られます。
そのような場合は、「どのようにしたらミスが防げると思う?」「次はどうする?」という質問に変えると、頭の中が解決思考に切り替わります。
そして、解決思考が習慣化すると、新たな課題にチャレンジすることのハードルが下がります。

このように、若手社員への関わり方を変えることにより、彼らの主体性を高めることが可能です。

若手社員育成に当たっては、若手社員だけでなく、彼らと関わる管理職やリーダーの接し方を見直す機会が必要ではないでしょうか?

日本生産性本部では、新入社員を対象に就労意識をテーマとする調査を長年にわたって実施し、その年ごとの新入社員の特徴やデータの経年変化を発表してきました。また2003年以降、現代コミュニケーション・センターより新入社員のタイプ命名を引き継ぎ、毎年3月に発表しています。

■新入社員の特徴とタイプ(毎年3月発表)
学識経験者などで構成される当本部「職業のあり方研究会」では多くの企業・学校などの就職・採用担当者の協力を得て、その年の新卒入職者の特徴や就職・採用環境の動向などについて調査研究を実施し、命名を行っています。平成29年(2017年)度新入社員の特徴とタイプは以下のとおりです。
• 平成29年度 新入社員のタイプは「キャラクター捕獲ゲーム型」
キャラクター(就職先)は数多くあり、比較的容易に捕獲(内定)出来たようだ。一方で、レアキャラ(優良企業)を捕まえるのはやはり難しい。すばやく(採用活動の前倒し)捕獲するためにはネット・SNS を駆使して情報収集し、スマホを片手に東奔西走しなければならない。必死になりすぎてうっかり危険地帯(ブラック企業)に入らぬように注意が必要だ。はじめは熱中して取り組むが、飽きやすい傾向も(早期離職)。モチベーションを維持するためにも新しいイベントを準備して、飽きさせぬような注意が必要(やりがい、目標の提供)。
• 平成29年入社組の就職活動の特徴 
昨年から引き続き今年も新卒の採用に積極的な企業が目立ち、「大学等の卒業予定者の就職内定率」(厚生労働省・文部科学省)では2 月1 日時点で90.6%と昨年の87.8%から2.8 ポイント増加した(大学(学部)の場合)。スケジュールが前倒しになった影響もあるが、リーマンショック前の水準を上回り、2000 年以来最も高くなった。中堅、中小企業を中心に採用予定数を達成できない企業もあり、採用活動に工夫が求められる状況もあった。就職先の条件として異常な長時間勤務やパワハラのないことを重視する傾向が見られた。しかし、面接の場でこのようなことを質問することがはばかられる風潮が今なおあり、就活生を苦労させた。
当財団で実施している新入社員意識調査(6 月~7 月発表予定)は売り手市場であるか、買い手市場であるかで数値が大きく変化する項目があり、どのような変化が生じているか注目される。
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■新入社員 春の意識調査(毎年4月発表)
本調査は毎年春に実施する日本生産性本部 経営開発部主催の新入社員教育プログラム等への参加者を対象に行っています。27回目となった2016年度の結果概要は以下のとおりです。

【過去最高】これからの社会人生活が不安だ 52.4%
【過去最高】残業が少なく、自分の時間が持てる職場がよい 74.7%
【過去最高】年功序列での昇格を望む割合 42.3%
【過去最高】良心に反する手段で進めるように指示された仕事であっても従う 45.2%
【過去最高】インターンシップ制度で実習した会社に就職した割合 27.0%
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■新入社員「働くことの意識」調査(毎年6~7月発表)
当本部「職業のあり方研究会」と社団法人 日本経済青年協議会は、新入社員を対象に「働くことの意識」調査を実施しています。本調査は昭和44年度より毎年実施しており、この種の調査ではわが国で最も歴史のあるものです。48回目となった2016年度の結果概要は以下のとおりです。
• 「働く目的」では「楽しい生活をしたい」が増加(昨年度37.0%→41.7%)し、過去最高を更新した。「自分の能力をためす」は(昨年度13.4%→12.4%)過去最低を更新。「社会のために役立ちたい」も3.2ポイント低下(昨年度12.5%→9.3%)。
• 「人並み以上に働きたいか」では「人並みで十分」が昨年度よりさらに増加(昨年度53.5%→58.3%)して過去最高を更新するとともに、「人並み以上に働きたい」(昨年度38.8%→34.2%)を24.1ポイント上回り、両者の差も過去最大となった。
• 「デートか残業か」では、「残業」(昨年度80.8%→76.9%)「デート」(昨年度19.0%→22.6%)と、プライベートの生活よりも仕事を優先する傾向があるが、ここ数年は「デート派」が増加している。
• 「会社の選択理由」では、「能力・個性をいかせる」が増加し、今年もトップ(昨年度30.9%→33.2%)だった。「仕事が面白いから」は減少し(昨年度19.2%→17.3%)、5年連続で減少した(平成23年度26.8%)。
• 「どのポストまで昇進したいか」では、10年前(平成18年度)と比べ「社長」「専門職」とも減っている(社長17.8→10.8%。専門職26.4→17.8%)。女性を見ると「課長+係長+主任班長」が増え(18.9%→30.8%)、昇進志向が高まっている一方で「役職に付きたくない+どうでもよい」も増加(25.5→29.6%)し、二極分化傾向が見られる。
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■新入社員 秋の意識調査(毎年12月発表)
本調査は新入社員の入社半年後の意識変化の調査を目的に、毎年秋に実施する日本生産性本部 経営開発部主催の新入社員教育プログラム等への参加者を対象に行っています。26回目となった2016年度の結果概要は以下のとおりです。
【過去最高】54.6% 条件のよい会社があればさっさと移るほうが得である
【過去最高】37.8% 自分には仕事を通じてかなえたい「夢」がある
【過去最高】86.3% 残業が少なく、平日でも自分の時間を持て、趣味などに時間が使える職場が良い
【過去最高】61.5% 会社の親睦行事には参加したい
【過去最高】84.1% 子供が生まれたときは、育休を取得したい

働き方改革〜残業時間削減に向けて(3)(コラム2017/04/25)

働き方改革〜残業時間削減に向けて(3)

“タイムマネジメントで残業をなくす”
 残業時間を削減するポイントは大きく2つあり、「ムダな仕事をやめる」「タイムマネジメントを行う」ことです。前者は前回のコラムで紹介しました。今回はタイムマネジメントをシンプルな形で紹介します。
 意識の問題として、仕事は足し算で捉えて、完了した時間が終業時間とするビジネスパーソンが多いものです。これでは仕事に対する工夫や効率化が見られず、残業の常態化につながります。本来仕事は納期から逆算してスケジュールを立て、年→月→週→日の流れに沿って当日やるべき仕事を時間軸でコントロールすべきものです。このやり方は仕事の足し算でなく、引き算で組み立てられたものです。今日の仕事スケジュールが決まっているから、残業が発生しない仕組みなのです。イレギュラーな仕事が入ったとしても、ぎっしりとスケジュールを埋めずに2〜3割余裕時間を空けておけば対応できます。
 他にスケジュール管理が上手くいかない要因として、時間の見積りの甘さもあります。各業務はきちんと分単位で記録することが重要です。時間を記録することで、優先順位のミス、段取りの不足など改善点がわかり、次回の仕事に活かせます。これにより仕事の効率化が進み、時間短縮のノウハウを蓄積できます。個人のものとしてでなく、部署や会社全体で改善活動を推進し、これらのノウハウは共有します。
 スケジュール管理は人それぞれにあり、自分にあったやり方でやればいいものです。但し、手帳、PC、スマホのアプリなどツールは一つにまとめることです。複数で管理すると、記入漏れや約束忘れなどのミスを生じるからです。ツールは出来るだけ見える化して、業務完了後に/を引いたり、チェックマーク記入したりすると、達成感があり仕事の意欲も向上します。
 スケジュールでやるべき仕事を記録しておけば、思い出したり、次の業務は何をしたらいいかなど考えずに済み、ツールの見える化によりシームレスで仕事を処理できます。締切時間を把握し、仕事を連続的に処理することで残業をなくし生産性向上を実現するのです。

 加えて業務にどれだけ集中できるかで生産性が決まります。ビジネスパーソンの生産性を向上させるためのノウハウを紹介します。
①時間帯別にナレッジワーク、ルーティンワークを振り分ける
 ここで重要なのは、生産性が上がるタイミングを押さえることです。たとえば一日の間では、朝から午前中がベストなタイミングだと言われています。企画書づくりや資料分析等の「ナレッジワーク」は午前中に充て、午後はルーティンワークに充てる、といった工夫をすると、進みが格段に速くなります。
一方、朝一番に何をするかという点も重要です。スタートダッシュとして滑り出しを良くすることも必要ですから、いきなりハードすぎる仕事をするのも考え物。素早くできることや得意なことを最初に行なって勢いをつけてから、ナレッジワークに移ると良いでしょう。

②メールチェックのルール化
 仕事のできる人のキーワードは「同質化」。複数のタスクを同時並行的に進めるより、一つひとつの仕事に集中するほうが生産性は上がります。そこでお勧めしたいのが、メールを見る回数を限定すること。返信に追われたり、その都度発生する用事に対応したりしていると、業務が細切れになり、集中力も途切れます。いったん途切れた集中力は、取り戻すのに15~20分かかると言われます。メールチェックは「朝・午後一時・夕方」など、1日3回程度に決めておくと良いでしょう。

③メリハリをつけてリズムよく仕事を処理する
 仕事のできる人は、休憩も大事にしています。集中すべきときは集中、力を抜くべきときに抜く、といったメリハリをつけているのです。休む間も惜しんで、デスクで昼食を摂りながら作業を続ける人がよくいますが、これでは午後の余力を失ってしまいます。
上手な休憩の秘訣は、「脱マンネリ」。席を立って洗面所に行くなら、ときには別のフロアに行ってみる。ランチに行くなら毎日同じ人とではなく、別の部署の誰かを誘ってみる。このように場所や人を変えると、脳が触発されます。

④スキマ時間を活用する
 スキマ時間を上手に使えるか否かも、差がつくポイントです。ここで役に立つのは、スキマ時間専用のタスクを用意する習慣です。「5分かかる仕事」「10分かかる仕事」「15分かかる仕事」と3種類ほど用意して付箋に書き、目につくところに貼っておけば、「電話の折り返し待ち」などの突然のスキマ時間もムダにせずに済みます。

 時間の使い方は一辺倒のやり方でなく、このように「タイムマネジメント」「メールチェックのルール化」「メリハリをつける」「スキマ時間の活用」などで、自分なりに工夫して手順と段取りで取り組んでいきましょう!

 

働きがいのある会社とは?(コラム2017/04/01)

働きがいのある会社とは?

企業と社員との望ましい関係とは、どのようなものでしょうか?

かつては、「ロイヤルティ(Loyalty)」という言葉で表現されていた両者の関係ですが、最近は「エンゲージメント(engagement)」と表現されるようになりました。
「ロイヤルティ」を日本語に訳すと「忠誠心」、「エンゲージメント」は「約束」、
どちらも顧客とブランドの関係を表すマーケティング用語を、企業と社員の関係を表す言葉としても用いるようになったものです。

ロイヤルティはステークホルダーから企業に向けられた一方向的な信頼や関係の強さですが、
エンゲージメントは双方向的な信頼や関係の強さを意味しており、協働してブランドを創り上げることを表しています。

そして、企業に対する社員のエンゲージメントが高まると、仕事に誇りと責任を感じ、自律的に考え、行動するようになるため生産性が向上します。

Great Place to Work(R)(以下、GPTW)は、毎年、「働きがいのある会社」ランキングを発表しています。
※2017年度のランキングは、こちらで閲覧できます。
http://special.nikkeibp.co.jp/atcl/NBO/17/gptw0221/ranking/

GPTWは、「働きがいのある会社」調査結果を分析し、ベストカンパニーに選出されている企業の取り組みから3つのポイントをまとめて発表しています。

◆働きがいのある会社が実践している3つのポイント

ポイント1 働く「時間」の選択肢を増やす
残業時間の削減やフレックスタイム制の導入などに加え、1日3~4時間といった超短時間勤務制度を採用する企業も増えてきています。
こうした制度は、育児休暇や介護休暇からの復帰を支援する制度としても活用されており、特にキャリアの断絶を防ぐことに高い効果があります。

ポイント2 働く「場所」の選択肢を増やす
在宅勤務を導入するだけでなく、制度を利用しやすい職場の雰囲気づくりが大切です。

ポイント3 経営層が職場風土改革に本気で取り組む
ワークライフバランスに対する意識改革のために、経営層から従業員に対し、会社のビジョンや方針と共にワークライフバランスを重視する思いや考えを伝えており、中には、従業員本人だけでなく、従業員の家族に対して、ワークライフバランスを推進することを宣言する手紙を送付している企業もあるようです。

エンゲージメントを高める要素は、人事制度や雇用条件だけでなく社員に対する信頼と尊重、人間関係や風通しの良さ、権限委譲の度合いなど様々あり、GPTWでは「働きがいを高める9つのエリア」としてまとめています。

※「働きがいのある会社」ランキングレポートでは、9つのエリアのベストプラクティスを紹介しています。

ランキング上位の企業は、制度づくりだけでなく、社員との対話や経営参画の場づくりを通して、長い時間をかけて風土改革を行っています。

働きがいのある会社は一朝一夕には実現しませんが、経営層の本気が社員に伝わることにより、社員の信頼と誇りが醸成される結果、自律性・自発性が高まり、創意工夫の生まれる魅力的な職場に変わって行くのではないでしょうか。

ビジネスプラスサポートでは、社員が参画する現場改革を通した働きがい向上をご支援しております。
どうぞお問い合わせください。

働き方改革〜残業時間削減に向けて(コラム2017/03/23)

働き方改革〜残業時間削減に向けて:その1

連合(日本労働組合総連合会))の「労働時間に関する調査(2015年1月16日発表)」によると、平均残業時間は一般社員20.5時間/月、課長クラス以上28.4時間/月です。
その残業の原因は図表①の通りです。
図表①「残業の原因」

出典:連合(日本労働組合総連合会)(http://www.jtuc-rengo.or.jp)「労働時間に関する調査」 2014年10月31日〜11月5日の6日間にわたり、20歳〜59歳の男女雇用労働者(正規労働者・非正規労働者)3,000名の有効サンプルを集計

残業の原因の上位3位までの回答は、
「仕事を分担できるメンバーが少ないこと」53.5%、
「残業をしなければ業務が処理しきれないほど、業務量が多いこと」52.6%、
「職場のワーク・ライフ・バランスに対する意識が低いこと」23.7%、
であり、これらを解決できれば残業の約7割を削減できます。

では、どうすれば残業を減らすことができるのか、図表②が回答者の対策となります。
図表②「残業削減の対策」

(出典)図表①と同じ
この対策を受けて、具体的な実施事項をピックアップしました(図表③)。特に間接部門において、多くの企業では業務の棚卸しがなされておらず、業務単位での標準時間が決まっていないのが実情です。タイムスケジュールもない状況で残業を削減する行為は場当たり主義と同じです。対策における上位2項目は正に部署別、業務単位別の時間管理がなされていないことが残業の要因になっているからです。ここにメスを入れることが残業削減のキーポイントとなるのです。

図表③「残業削減の具体的実施事項」

また、本来の仕事とは付加価値(売上高−コスト)を生み出すことであり、付加価値のない仕事はやめる必要があります。
例えば付加価値のない、ムダな仕事を列記すると、
・ 目的や意味のない会議やミーティング
・ 会議のための資料作成
・ 活用されない資料の作成
・ 同じメールを何回も見る
・ モノ探し、ファイル探し
・ データ入力
・ 決裁までの人数が多く、責任の所在がわからない
・ ITでできる仕事を手作業でやる
・ 指示がないと次の業務ができない
・ やり方が人によってバラバラ
・ 何回も確認の電話をする
など、いくつも挙げられます。

以上から生産性向上の最も有効な策が見えてきます。
それは、
1. タイムマネジメントを行うこと
2. ムダな仕事をやめること
の2点です。生産性向上とは、コスト(残業やムダ)を減らし、その余剰となった時間や資金を売上げ向上のために投資することです(図表④)。経営課題が困難になればなるほど、シンプルに本質を捉え、解決することが求められているのです。
※「生産性の公式」

働き方改革への提言(コラム2017/03/10)

働き方改革への提言

昨年8月、安倍首相は働き方改革を「最大のチャレンジ」と位置づけ、加藤勝信氏を新設の「働き方改革担当相」に任命し、関係閣僚と労使の代表、有識者が顔を揃える「働き方改革実現会議」を発足させました。
政府は「ニッポン1億総活躍プラン」として、「名目GDP(国内総生産)600兆円」「希望出生率1.8」「介護離職ゼロ」の3つの目標を掲げています。
※ 参照:名目GDP 504兆円(2016年),出生率1.5(2015年),年間介護離職者約10万人(2015年)

働き方改革が声高に叫ばれるのは、日本の成長と分配の好循環を実現するためです。
そのシナリオとは、
① 現状:人口減少+少子化+高齢化

② 子育て世代の男女や高齢者の就労促進

③ 働き方を見直し、労働生産性を向上

④ 消費の拡大

⑤ GDPの上昇

⑥ 出生率の改善(最終目標出生率2.1で人口が9,500万人で安定).
というものです。

首相は「働き方改革は、社会問題であるだけでなく、経済問題です」と昨年9月の実現会議の初会合で強調しました。改革のテーマは9項目あり、方向性として「労働生産性の向上」と「ダイバーシティ経営の実現」が主軸となり、働き方改革はワーク・ライフ・バランスの実現につながります(下図参照)。

※「働き方改革9項目」をベースに作成。

以上の政府主導の働き方改革は、人口減少に伴う人手不足から長時間労働や年功序列型賃金などの日本型雇用慣行の弊害により、企業は待ったなしの改革として迫られています。1)非正規雇用の処遇改善、2)賃金引上げ、3)長時間労働の是正は労働生産性の向上からもたらされます。
公益財団法人 日本生産性本部によると、
「2014 年度の日本の名目労働生産性は 770 万円であり、名目ベースでは上昇したが、変動を加味した実質(-1.6%)では前年度から2.8%ポイント低下し、5 年ぶりのマイナスとなった。」

出典:「日本の労働生産性の動向」2016年度版 公益財団法人 日本生産性本部

「国際的にみてみると、就業1時間当たりの日本の労働生産性は41.3ドル(4,349円)。OECD 加盟34カ国の中では第21位であり、2005年から21位の状況が続いている。」
としています。上記の労働生産性の推移と、この国際比較での順位の停滞を見る限り、日本の労働生産性は伸びがないことから働き方に本腰を入れていないことがわかります(図4参照)。

出典:「労働生産性の国際比較」2016年度版 公益財団法人 日本生産性本部

会議にムダな資料が多かったり、メール処理が全社的に統一されていなかったり、通勤に片道1〜2時間かけたり、一般的な会社には数多くのムダがあります。長時間労働の対策として、よく挙げられる「ノー残業デー」等の小手先のやり方では決してなくなるものではないのです。
「労働生産性の向上」「ダイバーシティ経営の実現」は働き方改革において真っ先に取り組むテーマです。従来の働き方をゼロベースから見直し、管理職の意識改革や企業の制度改革を行うことが求められています。弊社のコラムでは前回に引き続き、これらのエッセンスをシリーズにて伝えていきます。

「当たり前品質から魅力品質へ」(コラム2017/02/20)

「当たり前品質から魅力品質へ」

企業にとってホームページは企業情報を提供する、販売・マーケティングにつなげるなどの機能を持っています。例えば各々の自動車メーカーのホームページを閲覧すると、商品である自動車の動力性能、ドライバビリティ、安全性、デザインなどの特徴を訴求しています。メーカーによってはハードである車に対して、車の楽しみ方、用途、趣味としての広がりを持たせたソフトの提案も行っています。ホームページをより効果的に運用するために様々な工夫を凝らしているようです。

中でも目を引くのがマツダのホームページです。それぞれの車の開発の経緯、生産にまつわるエピソード等を物語として顧客に伝えているところに特徴があります。その物語の数々が顧客のこころを捉えるのです。その物語のひとつ―「ロードスター RF 開発物語 Vol.4『生産工場の創意工夫が切り開く、設計&デザインの自由。』車両組立技術者 中村 貴樹」のインタビュー記事に目を奪われました。
マツダでは、正常に機能することや、異音や振動の発生を防ぐクルマづくりを“当たり前品質”と呼び、そのクルマらしさを特に力を込めて表現したいピンポイントの作り込みを“魅力品質”と呼んでいます。品質を二つの側面から切り分けて、「魅力品質」という言葉が能動的品質のように受け取れるのです。「当たり前品質」がミスのない品質であり、最低限保障されるべき品質です。

多くの企業が製品やサービスに対して品質の正常化を目標としている中で、もう一つ上の品質―魅力品質を掲げている企業はどれだけあるのかわかりません。生産に従事する社員にとって、会社が掲げる目標としてのテーマ(=言葉)によって、受動的となるやらされ感なのか、能動的になる自発性なのか、分かれると思うのです。マツダではデザイン、生産など各部署が一体となって取り組んでいるところに強みがあります。社員を動かすには全員が目指すべき目標より、その目標の背景にある考え方、納得感、行動を促す力があるのかどうかで決まるのです。朝礼で経営理念や経営目標を唱和することも大事なことかもしれませんが、人を動かすものは何かを突き詰める方が理にかなっています。経営幹部が現場に行き、現場を見て、現場と話し、実際どんな働き方をしているのか知ることから始めてみてはどうでしょうか。なぜなら企業体質は現場そのものにあるからです。

以下はマツダHPの抜粋です。

熱い創意をそのままにお客様の元へ届けるために。
難題に受けて立つ、という志

ロードスター RFが、生産現場にとって前例のないほど難しい1台になることは、その構想が決まった時点ですでに明らかでした。
「全体のイメージが示された開発初期の段階で、そもそも造れるのか、と思えるほどたくさんの課題が浮かび上がりました。そこで私は、いくつかの提案を持って、デザイナーやメカニズムを設計するエンジニアの下へ足を運びました。」

「例えば、ドアガラスの形状が、ソフトトップモデルでは後端が丸くデザインされているのに対して、RFでは角張っています。効率的で確実な生産のためにはソフトトップモデルと共通化することが望ましいと、私は伝えました。ところがデザイナーからは、美しいデザインのポイントであるだけでなく、良好な視界の確保等々、深く熟考された末に導き出された唯一無二のカタチで、絶対に妥協できないという熱い言葉が返ってきました。」

「生産に伴う苦労と、熟考されたお客様のための創意のどちらを採るのか、という話です。事情が分かった私は、もちろんうなずきました。やりましょう! そのための方策を創造するのが、私たちの仕事ですから。」
そしてロードスター RFの実現に向けた最大の難関は、美しいデザインと複雑なリトラクタブルハードトップの開閉メカニズムの両立にありました。

「デザインと機能の両面から徹底的に突きつめられたリトラクタブルハードトップの設計図を見たときに、これは尋常でないと直感しました。隣り合う部品同士が、ハードトップの開閉状態に係わらず、常に狭い空間の中にびっしり並んでいるんです。わずかでも組み付けがずれると、開閉動作の途中で干渉する可能性があります。

マツダでは、正常に機能することや、異音や振動の発生を防ぐクルマづくりを“当たり前品質”と呼び、そのクルマらしさを特に力を込めて表現したいピンポイントの作り込みを“魅力品質”と呼んでいます。ロードスター RFのリトラクタブルハードトップは、当たり前品質を実現すること自体に極めて高い技術力が求められ、そしてそれがそのまま魅力品質につながる雰囲気にあふれていました。

もし、たった1台をたっぷりの時間と何名もの組み付け職人で仕上げることが許されるのであれば、ハードルはそれほど高くないでしょう。けれどもマツダの製造ラインは、デミオからロードスターにいたる、あらゆるモデルが渾然一体となって流れてきます。そのような製造ラインの流れを滞らせることなく、何千、何万台というロードスター RFを高品質のまま安定的に造らなければならないということです。」

「どうするか? 知恵を絞って絞って、絞りきる。知恵と努力は、道を開きます。私に残された道は、それしかないんです。なぜなら私は、エンジニアやデザイナーの下に足を運んだ挙げ句彼らに説き伏せられてしまった、というわけではありません。彼らの熱さに、これは自分たちもやらなければ、と突き動かされたという感じなんです。よし、受けて立ってやるって決意したんですから、やらんわけにはいかんでしょう。」
(参照:http://www.mazda.co.jp/beadriver/experience/rf_develop/04_2/ )

熱く燃える27歳が奔走するその理由は?

本格的な量産を目前に控えたこの日、中村は額に汗を浮かべて、待ち合わせの時間ギリギリに駆け込んできました。訊くと、たった今まで工場で生産の手順を練りあげていたのだと。朝から戦いのまっただ中にいたのだと、そう教えてくれました。

「そんな毎日を過ごしているうちに、最近おもしろい感覚を覚えるようになってきたんです。あれ? 自分はマツダの社員なのに、マツダのために働いてるという感覚が薄れてきたなと。この部分はこういう手順で組み付けないといけないんだ!と自分やメンバーを鼓舞しているときに、頭の中にあるのはお客様のことばっかりになってきたんです。」

「ここで造りあげたクルマをお客様に迎えていただくとき、どんな表情を見せてくださるんだろう。きっと、笑っておられると思うんです。そして、長く楽しんでいただいた将来のある日、いったいどんな表情を見せてくださるんだろう。そのときも、きっと笑顔であってほしい。それを実現するのが、私の仕事じゃないかと思うと、私の頭の中にあるのは、マツダよりもお客様のことばかりになってきてるんです。格好を付けてるわけじゃなく、これが27歳の今の自分の本音なんです。」
(参照:http://www.mazda.co.jp/beadriver/experience/rf_develop/04_3/ )

生産性を上げるアイデアその3 「身近にスマホがあると、集中できない」(コラム2017/02/10)

「身近にスマホがあると、集中できない」

認知心理学の専門の河原純一郎・北海道大特任准教授の実験では,スマホがそばに置いてあるだけで、「メールが来ないか」などと気を取られ、注意力が低下されることが確認された。また、脳科学者の川島隆太・東北大教授がスマホを操作中の大学生約20人の脳の血流量を測定したところ、論理的な思考を行う大脳の前頭前野が「眠っているような、ボーッとした状態」になっていたという(読売新聞2017年2月1日号)。

大変興味深い新聞記事です。これらは誰もが経験していることではないでしょうか。意外にオフィスの現場では、デスクの上にスマホを置いて仕事をしているケースをよく見かけます。会社でスマホを貸与している場合もあり、仕事で使われているのか、私用で使われているのか、一見しただけではわからない状態です。
「情報機器等の使用」について、きちんと対処している会社の就業規則では、「会社のパソコンや会社が貸与した携帯電話を私的に使用しないこと」「タブレット型コンピュータやスマートフォン(個人所有のもの)を業務で使用しないこと」というように定めています。情報漏洩が予測される職場では持ち込み禁止になっている場合もあります。一般的な会社でスマホの私的使用を禁じているとしても、デスクの上に置いているだけでは違法にはなりません。しかし集中の妨げとなり、業務効率が落ちたり、業務上のミスが生じていれば放置するわけにはいきません。きちんとスマホ使用については具体的に就業規則を決める必要があります。

スマートフォンを所有する15歳~59歳の男女553人を対象に、スマートフォン依存について聞いたところ、「かなり依存している」が18.8%、「やや依存している」が52.6%と合わせて71.4%の人がスマホ依存の自覚があることがわかった。年代別で見ると、10代が21.6%、20代が26.4%、30代の21.8%がスマホに「かなり依存している」と自覚している結果となった(下図参照:MMD研究所調査 https://mmdlabo.jp/investigation/detail_1563.html)。

またMMD研究所によると、スマートフォンに接触している時間では「2時間未満」が最も多く20.3%、次いで「3時間未満」が17.9%、「1時間未満」が17.0%であり、「2時間〜3時間未満」が2割弱という結果に驚きます。
現代はあまりにもスマホ依存のライフスタイルです。会社内のスマホ使用について、就業規則で定めることも重要ですが、一日の貴重な時間に対しての教育も現代では不可欠です。時間を有効に使うには仕事もプライベートも共通しているからです。業務上、プライベートの部分に踏み込むことは出来ませんが、時間の有効活用については共通するものであり、スマホ依存症で寝不足になっていれば業務に支障を来します。現代では「スマホを制する者は時間を制す」につながっていると思えるのです。

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