2017年6月20日

働き方改革〜「オフィスも働き方改革(1)」(コラム2017/06/20)

オフィスも働き方改革(1)

世の中の進歩は著しく、変化に対応していくためにも、企業には新たな製品やサービスを求められています。一日中パソコンに向かい合って、アイデアは出てくるでしょうか。様々な場所に行ったり体験したりしたことや、知らない知識を得たり、いろんな人に出会い話をしたことなどと、自ら持っている知識と関連づけされて、アイデアとなるのです。従来型での個人が埋没するオフィス環境では交流も雑談も少なく、創造性を発揮することは困難です。

科学ジャーナリストのスティーブン ジョンソン(米国)はTEDプレゼン「良いアイデアはどこで生まれる?」で次のように述べています(2010年9月)。

「私たちは人からアイデアをもらいます。コーヒー店で偶然会った人からアイデアをもらって、新しい形態に縫合して、新しいアイデアを生み出します。そうやって革新が起きるのです。つまり革新や熟考とは何かについての概念を一部変える必要があります。熟考といえばこんな姿でした。こちらはケンブリッジ時代のニュートンとリンゴです。像はオックスフォードにあります。座って熟考したり、リンゴの落下を見て万有引力の法則に気づいたりします。でも、歴史的にみると革新を生み出す空間とは、実はこのような姿をしています。酒場での政治的な集まりをホガースが描いたものです。当時のコーヒー店もこのような様子でした。混沌とした状況でアイデアが飛び交い、さまざまな立場の人が集まって、新しく面白く予測不能な衝突が生まれていそうです。より革新的な組織を作りたいなら、変に思えてもこれに少し似た空間を作ったほうがいい。皆さんのオフィスをこうしたほうがいい。それが私のメッセージです。」

これから言えることは、創造性を発揮するには、異質な人同士の交流や雑談が起点となることです。

それを実現するオフィスのあり方について、「20のアイデア」を紹介します。
■オフィス活性化(創造性の発揮)のための20のアイデア

① フリーアドレス制にする
② 開放的なミーティングスペースを設ける
③ リフレッシュスペースを設ける
④ 他社と共同利用できるオフィスを設ける、または賃借する

⑤ オフィスレイアウトを変形、多角形にする
⑥ 部署間の仕切りをなくす
⑦ 音楽部屋やハンモックを導入して、従来のオフィスの枠を外す
⑧ 時間帯によって変化するBGMを導入する
⑨ 自然光が降り注ぐナチュラルルームを設ける
⑩ サテライトオフィスを設置する
⑪ バランスボールを椅子にする
⑫ スタンディングデスクを設置する
⑬ 昼食の一部を負担し、より美味しい昼食メニューを提供する。あるいは従業員同士の対話を促進するため、同僚との昼食代の一部支給する
⑭ 社員食堂のレイアウトや什器を利用人数によって変更できるようにする。またはカフェ風に変更する
⑮ ミニ図書館スペースを設ける。様々な雑誌を定期購読する
⑯ 打ち合わせの場としてのキッチンを設ける
⑰ 観葉植物をふんだんに取り入れる
⑱ ロビーをサロンとして開放する
⑲ ロビーを個展スペースとして一般開放する。または社員のアートの発表の場とし、仕事以外の創造性を発揮させる
⑳ 近くのカフェと提携しコスト負担し、打ち合わせの場として提供する

またアドビは、創造性が企業業績に大きな影響を与えるという調査結果を発表しています。主な調査結果は以下のとおりです。

「創造性を重視する企業は、収益、市場シェア、競争優位性の点で競合企業を上回っていることが判明」

・ 創造性の向上に取り組む企業は、同業他社より高い増収率を達成
:本調査では創造性の向上に取り組んでいる企業の 58%が、2013 年度に前年度比 10%以上増の増収率を達成しています。これとは対照的に、創造性の低い企業で前年度比 10%以上増の増収率を達成したのはわずか 20%に留まっています。
・ 創造性の高い企業ほど市場シェアが高く、競争優位を確保
:本調査から、創造性の高い企業ほど市場シェアも競合他社より高く、市場のリーダーとしての地位を築いている傾向があることが明らかになりました。市場シェアが高く、市場のリーダーとしての地位を築いていると回答した企業のうち、創造性の高い企業は創造性の低い企業の約 1.5 倍です。
・ 対象者の大半が創造性の向上により好影響がもたらされると回答しているが、自社の創造性については「高くない」と回答した企業が全体の61%を占めている
:自社の活動が、クリエイティブだとすぐにわかる企業とクリエイティブな企業とまったく同じであると答えた企業は、11%に過ぎませんでした。51%の企業は、自社はどちらとも言えない、あるいはクリエイティブな企業と同じではないと答え、10%は、自社の活動は実際には、クリエイティブな企業とは正反対であると考えていました。
・ 創造性の高い企業ほど働きがいのある企業として評価されている
:従業員にとって快適な職場環境は、創造性を育む「肥沃な土壌」です。創造性の高い企業の 69%が国内で「働きがいのある企業」として評価・表彰されたことが明らかになりました。創造性の低い企業でこのような受賞歴があるのはわずか 27%でした。

出典:http://blogs.adobe.com/japan-conversations/creativedividend/

アメリカのグーグル、アップル、アマゾンなどの成長企業の共通点は創造性の高さに尽きます。その仕掛けとして、人間性重視の企業風土、ICTの活用、クリエイティブなオフィス環境があります。生産性を高めるICTやクリエイティブなオフィス環境はコストでなく、投資と捉えています。

但し、資金の限られた一般企業にとっては最先端のオフィス環境を作るのは厳しいものです。経済産業省では、2007年よりクリエイティブ・オフィス推進運動実行委員会を設置し、知識経済化の進展を背景に、その担い手である企業組織が柔軟かつ活動的に生産性・競争力を向上させ、個人の能力の質を向上させるためのオフィス環境を構築すべく活動を行っています。

(社)ニューオフィス推進協議会では、クリエイティブ・オフィスの定義を次のように述べています。
「クリエイティブ・オフィスとは、知識創造行動を誘発する、空間・ICTツール・ワーカーへのはたらきかけ(3つの加速装置)と、組織の目標とプロジェクトのゴールに向けたマネジメント(駆動力)の双方を備え、組織の創造性を最大限に発揮するための働き方に適した「場」を指します。こうしたクリエイティブ・オフィスを実現することにより、「12 の知識創造行動」の連鎖からなる知識創造サイクルが回り、組織は目標に向けて成長・進化します。加えて、コミュニケー ションの活性化、モチベーションの向上、目標・理念の共有促進といった効果が生み出されます。クリエイティブ・オフィ スの実現がもたらすこうした効果の結果として、企業の競争力や業績の向上がもたらされると期待されます。」
※ クリエイティブ・オフィスの考え方は、野中郁次郎氏が提唱した組織的知識創造理論・SECIモデルの考え方をベースにしています。

図1 「12 の知識創造行動」
図2 創造理論・SECIモデルの考え方
参照:
http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/consumergoods/downloadfiles/flow_diagram.pdf

12の知識創造モデルをオフィスでの行動の例としたものが表1です。
表1 12 の知識創造行動のモデル

参照:
http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/consumergoods/downloadfiles/H21_office_report.pdf

(社)ニューオフィス推進協議会の知恵や事例をオフィスづくりの基盤としたいものです。また諸外国のオフィスづくりの先端企業からも学ぶべきことが多く、これらに触発されながらオフィスの働き方改革を進めていくとよいでしょう。
次回では、クリエイティブ・オフィスの具体例やオフィス環境づくりのノウハウを紹介します。

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