2017年7月1日

藤井聡太四段にみる教育改革の視点(コラム2017/07/01)

藤井聡太四段にみる教育改革の視点

破竹の勢いで最年少棋士・連勝記録を更新している藤井聡太四段の強さについて様々な報道がされていますが、先日のテレビ番組で面白い解説がありました。

対戦した棋士によれば、藤井四段の将棋には「ここが明らかに弱い」という弱点がなく、相手の機先を制する指し回しが特徴のようです。そして、差し回しの斬新さがAI将棋に似ている、と評されていました。
人間である棋士は、劣勢に立ったとき、負けるリスクに怖さを感じて守りに集中するそうですが、藤井四段は、怖さを感じていないかのように、先手必勝で攻撃してくるとのことでした。
その藤井四段の将棋が変わったのは、AI将棋を研究し始めてからのようです。
AIの良さと定石の良さを組み合わせたのが藤井四段の将棋、と解説されていました。

この話を聞き、アジア選手権女子シングルスで世界ナンバーワンの中国選手に勝った平野美宇選手の卓球を思い出しました。
中国選手に勝って世界一になるために彼女が取り組んだのは、相手の攻撃に攻撃で応戦する卓球とのことでした。試合をテレビで観戦しましたが、かなりのスピードで打ち合う攻撃的な卓球で迫力がありました。
これもまた、新たな時代の卓球スタイルと言えるのでしょう。

戦う土俵は異なりますが、彼らはイノベータであることが共通しています。

日本は今、既成概念を変えるイノベータを育てる教育に舵を切ろうとしています。
それが、「2020年問題」と言われる教育改革・教育再生で、その目的と目指す能力は以下のとおりです。

教育改革の目的:
1. 個々人の自立や協働に必要な主体的、継続的な力の育成
2. 社会を生き抜く力の養成
3. 世界で活躍できるグローバル人材、イノベーション人材の育成
4. 未来への飛躍を実現する人材の養成
5. 誰もが教育機会へアクセスできる環境の整備

◆学力の3要素
1. 知識・技能の学力(知識技能を備えているだけでなく、適切に活用できる力)
2. 思考力・判断力・表現力(正解のない問題を解決する力)
3. 主体性・多様性・協働性(ありたい姿を明確にして、多様な人との協働を通して
社会に貢献する力

2017年現在、改革の全容は確定していませんが、学習指導要綱や教科書制作においては、すでにその内容が反映されています。授業スタイルとしては、「教える授業」から「考え、探求する授業」への移行が進んでおり、すでに全国の高等学校、大学で「アクティブ・ラーニング」を導入した授業が行われ、小中学校でも同様の動きがあります。

アクティブ・ラーニングとは、生徒がお互いに協力しながら学ぶ学習方法で、体験学習・問題解決学習・調査学習ど主体的な討論やグループワークによって探求を深めます。

中でも、秋田県はアクティブ・ラーニングを取り入れた授業にいち早く取り組んでおり、ある中学では、英語授業を生徒が企画し、生徒が作成した教材を使ってデモ授業を実施。他の生徒から評価を受ける探求型授業を行っています。

そして、大学入試問題も大きな変革が検討されています。2020年からは、教科ごとの試験に「合教科・科目型・統合型」による試験を加えることが検討されており、理系の問題に文系の要素が加わるなど、総合的な学力が問われるようになります。

また、文部科学省の中央教育審議会が公表している内容には、「小論文」「面接」「集団討論」「プレゼンテーション」「調査書」「活動報告書」「資格・検定試験などの成績」「各種大会などでの記録」などを入試に活用する方針も打ち出されています。  この改革の本質は、評価ポイントが「どれだけの知識・技能を有しているか」から、「どれだけの知識・技能を主体的に活用できるか」に変わることです。

◆教育改革の背景

 教育改革の背景にある大きな要因として、以下3点が指摘されています。

1.グローバル化、世界の変化への教育的対応

2.日本の人口動態(少子高齢社会における生産年齢人口の減少)

※生産年齢人口:年齢別人口のうち労働力の中核をなす15歳以上65歳未満の人口層

3.世界のGDPに占める日本の割合の低下

つまり、大きく変化する世界情勢の中で、少子高齢社会に突入している日本の活力を維持するためには、社会課題を設定し、周囲を巻き込んで解決策を試行錯誤できる探求型人材が必要になっているのです。

◆組織内の人材開発に与える影響は?

藤井四段は、中学の教師に対して「授業を理解しているのに、なぜ宿題が必要なのか?」を問い、宿題の意義について30分間のディスカッションを行い、意義を納得して宿題に取り組むようになったそうです。すでに、教育改革が目指す21世紀型教育を受けた人材が社会に出始めています。

彼らは、従来の考え方や仕事の進め方などの既存の常識に対して本質的な意義を問い、問題提起を行う傾向があります。そして、組織方針の背景にある考え方や行動の目的を明示しないことに違和感を覚えるでしょう。彼らの能力を引き出すためには、これまで以上に社内の対話やフィードバックが重要になります。半期に一度の考課フィードバックではなく、日々の仕事の中で頻繁なフィードバックを行い、彼らの課題感を引き出し、部門や階層を越えたフラットな対話ができる場を設定することにより柔軟な発想を活かすことができます。

今後、改革型教育を受けた人材が社会に輩出されることになりますが、彼らを受け容れる会社、先輩社員が、従来の考え方、働き方や評価方法に固執していると、彼らの能力を伸ばすことが難しくなります。

教育の変化に伴い、組織における人材開発のあり方も変化することを求められるのではないでしょうか?

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