コラム「探し物の浪費への考察(4)」(2018年3月22日)

探し物の浪費への考察(4)

「すぐ探索、検索できる」仕組みをつくることは探し物の浪費をなくすうえでも重要なポイントです。今回はシリーズ最終回として、モノに焦点を当て、現場で即把握できる「見える化」により問題解決を図ります。

(1)所番地管理
モノにおいては、所在地を示す所番地での管理が基本です。アルファベットや数字を利用して誰もがわかる所番地で一元管理します。
オフィス内を碁盤の目で区画化したり、部署毎のスペースで区分します。

(2)置き場No
次に棚やキャビネットなどの置き場に「置き場No」をつけます。「部署名」と「通しNo」の表示、または「アルファベット」+「通しNo」の表示とします。

 

 

 

(3) 棚No.
書庫や文具消耗品の棚などは、それぞれに棚No.を付けます。こうすることによって、「あの棚」「この書庫」といった曖昧な指示代名詞がなくなり、個別の管理ナンバーにより、所在が明確になります。下記の図では書庫扉に貼付した管理プレートの例です。

この書庫には何の書類を保管しているのか、把握でき、探す時間を短縮できます。より工程を短縮するのであれば、扉を撤去し、管理プレートは書庫の上に表示し、直接書庫内がわかるようにすれば、「扉を開ける」「扉を閉める」の2つの工数がなくなり、スピーディーな処理が可能になります。加えて扉があると、整理整頓が遵守されず、書類の紛失にもつながる問題もあり、重要書類は施錠付きキャビネットで、その他のものはオープンキャビネットで管理すると良いでしょう。

(4) 一覧表の見える化

すべてのモノ、書類等を把握できる一覧表ではなく、主要なモノ・書類の所在がわかる一覧表を作成します。オフィスレイアウト図とセットで見える化すると誰もが目的のモノ・書類を探すことができます。

(5) 用途別整頓

文具などは用途別に管理すると、目的のモノが見つけやすくなります。使用頻度が多い順に並べることも重要です。また分類カラーも加えると条件反射により瞬時に分類を把握できます。

 

 

(6)持ち出し品管理

持ち出し品は持ち出し記録簿にて管理します。ダブルブッキングを防ぐために予約はPCでの管理とし、現物を持ち出しする際には記録簿にて二人確認で記帳します。

高価な備品などは鍵付き保管ボックスで管理すると、管理者との同時確認により記帳漏れも防止でき、確実に持ち出し管理ができます。

弊社では「整理整頓セミナー」を実施しています。整理整頓をマスターし、「探すムダ」「仕事が中断するムダ」「時間を浪費するムダ」などを一掃しましょう!
■研修プログラム「整理整頓研修」:https://j-bps.com/wp/project/07/

事務効率化コンサルタントに聞く!【その①】ミスが起こる仕組みを知って、リスクを回避!

事務効率化コンサルタントに聞く! 【その①】ミスが起こる仕組みを知って、リスクを回避!

情報サイト「女性のための求人・転職サイト「とらばーゆ」
U29女子プロジェクト」2018年3月6日

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コラム「フラットで縦横無尽なコミュニケーションが組織を活性化する」(2018年3月5日)

<AI×ビッグデータで関係性を可視化する>

組織活性化は多くの企業が望んでいることですが、問題が広範囲に及ぶため、何に手を入れるのか具体的な課題を絞り込んで施策を打つ必要があります。
逆説的ではありますが、活性化していない組織では、「社内の風通しが悪い」「情報が滞りスピーディな意志決定の妨げになっている」「割り込み仕事が多くデスクワークに支障をきたす」という課題が表面化しているのではないでしょうか?
これらの課題に、AIとビッグデータを活用して取り組むサービスがあります。

 

 

 

 

 

 

 

「Hitachi AI Technology/組織活性化支援サービス」より転載

◆活き活きした組織では、縦横のコミュニケーションが活発に行われている
日立製作所は、AI×ビッグデータ解析により、組織内のコミュニケーションを可視化するサービスにより、【生産性の高い活き活きした組織】と【元気のない組織】の差異を測定・数値化するサービスを開発しました。
測定の対象となる社員が【名札型ウェアラブルセンサー】を付けて働き、組織内コミュニケーションの量と質、ストレスなどを分析・可視化します。そして、その際の指標は、『組織活性度』というもので、「この組織はみんな楽しそうで、いい雰囲気だな」「このチーム、元気がないな」という体感を数字で表します。具体的には、組織に属する従業員一人ひとりの無意識の身体の動きから、そのとき感じているストレスの平均値を測定し、『組織活性度(ハピネス度)』の数値を算出、ストレスの低い組織は『組織活性度』が高くなり、ストレスが高いと『組織活性度』が低くなるということになります。

◆霞ヶ関の働き方改革にも活用

この図は、内閣人事局における働き方改革のために行われたコミュニケーション活性度実証実験での測定結果で、ネットワーク線が太いほどコミュニケーション量が多いことを示しています。この実証実験の結果、各係でのコミュニケーションの強弱、ハブ役として機能している幹部の動き、役職の高いほうが会話の聞き役となっていること、勤務時間中はデスクワークの時間が約半分を占めていることなどが明らかになりました。

◆フラットで縦横無尽なコミュニケーションが組織を活性化する
この実証を行った内閣人事局に限らず、職場のコミュニケーションが役職の上下間に偏在し、しかも、下から上に対する報・連・相に偏っている傾向は、多くの企業で見られる現象ではないでしょうか。
縦割りの弊害が叫ばれ、フラットな組織が標榜されているにも関わらず、コミュニケーションが停滞し、偏在する状況では、組織活性化、社員の幸福度向上は実現しません。
コミュニケーションの質と量を可視化することで社員の関係性を明らかにし、フラットで縦横無尽なコミュニケーションが行われる施策を打つことは、組織活性化の突破口になるかもしれません。

コラム「探し物の浪費への考察(3)」(2018年2月26日)

探し物の浪費への考察(3)

環境整備の実施により「探さない」仕組みを構築することで、探し物の浪費がなくなります。「探さない」言い換えれば「探す行為をなくす」ことが最も効率的です。しかし、探し物が発生した場合、どうすべきかについても考慮しておきます。それは「紛失してもすぐ見つかる」仕組みにより、保険をかけ緊急の事態に対処するものです。
また、探索時間を最小限にすることも重要です。本の目次のように、モノや書類に対しても検索システム、一覧リストや置き場マップなどがあると目的のものをすぐ見つけ出すことができます。
これらの行為を3つの象限で捉えると、次の表の通りとなります。

今回は探すことが多いモノ・書類に焦点を当てて「②紛失してもすぐ見つかる仕組み」を紹介します。
(1)「モノ」の紛失対策
モノに電子タグをつけることで、すぐ見つけることができます。一般的なRFIDタグへの電源供給の方法には、「パッシブ型」「アクティブ型」の2種類があります。
パッシブ型は、リーダから送信された電波を受けてタグ内のICチップの回路が起動され、ID情報をリーダ側に返す仕組みを持ちます。構造が単純なため比較的製造コストを抑えることができ、大きさも小さくすることができますが通信距離が短いことがデメリットです。例えば、IC乗車券や社員証、クレジットカードなどで、資産管理や物流・販売・追跡などさまざまな用途として製品に組み込まれた製品もあります。
一方、アクティブ型はタグ内に自らが電源を持ち、電波を送信します。このため通信距離を求められる状況においては威力を発揮しますが、パッシブ型と比較して高価であり、定期的(3〜5年程度)に電池残量の確認や電池の交換が必要です。
話題のTrackR pixelはアクティブ型タグで100円玉サイズの大きさであり、音だけでなくLEDライトでアイテムの場所を知らせてくれます(スマホと連動)。クラウドロケートでアプリに表示される地図からアイテムを探すことができます。

参照:https://www.thetrackr.com/jp/

(2)書類の紛失対策
①QR活用による紙文書の運用効率化
紙で配布して回収する書類や日々の報告など、仕分けや管理が必要となる紙文書を、スキャンするだけで自動的に仕分けし、電子化して保存できます。これにより、「仕分け」「ファイリング」する手間がなくなり、さらに後工程を効率化できます。
■富士ゼロックス社の「業務別らくらくスキャン」システム

参照:http://www.fujixerox.co.jp/solution/menu/sol023/

②積層RFIDタグ活用による「書類管理システム」
書類についてもRFIDにより効率よく、安全かつ容易に管理が可能になります。積層RFIDタグを活用した日立の「書類管理システム」では、書類や図書などの用途向けにアンテナ形状を従来のRFIDタグから変更させることにより、約1~2mm間隔で積み重ねても同時に読み取ることが可能なRFIDタグです。

■重要書類管理システムのメリット

参照:
http://www.hitachi.co.jp/products/it/traceability/case_study/juyosyorui_kanri/index.html

以上のようにデジタルによるモノの追跡管理は日進月歩で進化しています。これらをうまく活用することで、「探す」ムダは解消され、情報漏えい防止につながります。次回は「③すぐ探索、検索できる」創意工夫例を紹介していきます。

コラム「探し物の浪費への考察(2)」(2018年2月15日)

探し物の浪費への考察(2)

前回の考察では、探し物が発生する主要因は「元に戻さない」ことでした。その解決策は、「定位置管理」「元に戻す習慣化」「モノの総量管理」の3つであることを述べました。
これらの手段が整理整頓であることは誰もが理解しています。しかし頭で理解することと、行動することは別次元です。探し物の浪費がなくなれば、本来の仕事へ集中でき、仕事はうまく流れます。納期遅れも解消でき社内からもお取引先さまからも信用を得られ、会社の発展に貢献できます。このように探し物をなくすことは仕事のスムーズな流れをつくる大切な要素なのです。
「仕事の流れ化」を阻むものが「停滞のムダ」であり、「探す」「手待ち」「やり直しする」「転記する」「確認する」「割り込み仕事で中断する」などが挙げられます。結果的に余計な労力となり、残業時間が発生し、心身ともに疲弊します。中でも「探す」行為が1日数十分、浪費していることから、「仕事の流れ化」を念頭に置いた環境整備を行うことを最優先すべきです。

環境整備の一連の流れは、
分ける:要るモノと要らないモノを分ける。

捨てる:要らないモノを捨てる。

整える:要るモノを使いやすいように配置する。

流れる:業務の流れとモノの流れをマッチさせる(作業動線をつくる)。

保つ:モノの定量、保管・廃棄ルールなどを決める。
定期的に掃除し、きれいにする。
の5つのステップによる流れ化です。

物事はシンプルにし、わかりやすくすることで、行動が容易になります。そして行動を促すには、行動するための時間を割り当てることです。仕事のスケジュールに組み込めば否が応でもやらざるを得なくなります。行動の源泉は決意でなく、日々のスケジュール項目として業務時間に割り当てるだけです。現在のムダな労力をなくし、後に可処分労働時間をつくるための環境整備を行うのです。
またモノや仕事環境だけでなく、現在足枷となっている業務のマイナス要素をなくすことも後の可処分労働時間を生み出します。よく現場では多忙だからそんな余裕はないと必ず反対勢力が存在します。しかし仕事に追われており、余裕がないからこそ、一旦立ち止まってマイナスや障害の要因を抽出し、楽してより生産性が上がるよう現在の業務を清算すべきです。仕事の流れ化の「分ける」行為は業務については、要る業務と要らない業務を分けることです。仕事に追われている部署ほど、業務の棚卸しは重要な解決手段です。仕事の流れ化の実現にはモノや環境と同じく、業務そのものも避けて通れないからです。

探し物の浪費は単なる整理整頓ができていないことの裏返しというより、モノや仕事の流れをコントロールしていないことに原因があります。余計なモノに振り回されないためにも、まず環境整備による流れ化を実践することをおすすめします。

コラム「探し物の浪費への考察(1)」(2018年1月30日)

探し物の浪費への考察(1)

統計によると、人は1日10分、成人人生の3680時間、実に153日間を探し物に費やしているといいます。一生で半年近くも探し物をしていることに驚きます。またイギリスの民間の保険会社が成人男女3000人を対象に行った調査によると、探し物をする回数は平均で1日9回、年間3285個にのぼっています。20歳からの60年間で、のべ20万個近いアイテムを見失う計算になります。ここでは探し物の時間について調査されていませんが、1日9回であれば、少なくとも1回当たり3分で試算しても1日27分になり、成人人生の9936時間、414日と1年間を軽く超えてしまいます。
これらの実態から「探し物をなくす」ことはビジネスにおいても、プライベートにおいても重要課題です。基本的に整理整頓ができていないと探し物が頻発することは誰もが理解しています。仮に整理整頓されているとして、探し物が発生する要因は何でしょうか。ゼロベースから考えると、定位置管理でのモノ探しは、元に戻さないことが一番に挙げられます。職場が乱れる要因の一つである、仮置きがその筆頭格です。またモノや書類を紛失しやすい状況はモノ環境の煩雑さにもあります。誰もが簡単に元に戻せる置き場や環境づくりが必要なのです。モノの指定席や書類の保管場所が決まっていても、元に戻しにくいのであれば「ルールの徹底」という一元論では解決は不可能です。つまり探し物をなくすには、①誰もがわかる定位置管理、②元に戻す習慣化、③モノの総量管理の3つがリンクされていることです。①は整理整頓の技術、創意工夫が必要であり、②は誰でも元に戻せる「見える化」→「元に戻す」を習慣化すること、③についてはモノや書類が増えない定量の仕組みづくりが求められます。
探し物の問題は仕事だけに特化することでなく、プライベートの要素まで踏み込んで当事者意識をより持たせることで各自が真剣に対処しようとします。探し物の時間は私生活まで及んでいます。
仮置きがなくなり、元に戻すことが守られると探し物はなくなります。ミーティングにおいても家庭での探し物をなくす解決方法をビジネスでも十分に応用することです。探し物は環境、収納場所、生活(作業)動線など、二者にすべてが共通するからです(下記参照:「探し物が多い人の特徴はビジネスもプライベートも共通」)。また探し物をなくすことは、ムダがなくなり正味作業時間の向上から、一人ひとりの業務処理能力を約7%向上させるのです:1日8時間/1日7.5時間(▲約30分の探す時間)。

(参照)探し物が多い人の特徴はビジネスもプライベートも共通

コラム「生産性向上のカギは「やめる」「なくす」にあり」(2018年1月18日)

生産性向上のカギは「やめる」「なくす」にあり〜コンビニに学ぶ

 カイゼンにおいて最も効果が高いのは「やめる」「なくす」ことだ。人手不足が深刻なコンビニ業界において、ローソンが無人営業に一部店舗で導入する考えだ。つまり人手をなくす発想である。

 ローソンは4日、深夜や早朝の午前0時~5時は従業員が接客せずに「無人」で決済できる店舗を来春から導入する、と発表した。首都圏の2~3店舗で実験的に始める予定だ。コンビニエンスストアでは人手不足が目立ってきており、解消のために新型店を導入することにした。
 買い物をする人は、あらかじめスマートフォンのアプリをダウンロードする。コンビニ入り口でアプリを起動させ、センサーにかざすと入店できる。
 店内では商品を手に取り、アプリを起動させたスマホで商品のバーコードを読み取らせると、自動的に決済される。「LINEペイ」などの決済サービスを使う。買い物を終えると、無人のレジにあるタブレットにスマホをかざし、店を出る。
 店頭は無人だが、裏手で商品在庫の管理などの作業をしている従業員が1人いる。店内で不正がないかは増設したカメラで監視する。この時間帯は、たばこや酒類の販売はしない。
 レジ横のから揚げなどの商品は、ボタン一つで顧客が調理できる機械の導入を検討している。
 4日に実験店舗を公開したローソンの竹増貞信社長は『デジタル技術を駆使して省力化し、24時間営業をしっかり守っていく』と話した。将来はスマホでの決済を深夜以外の時間帯にも広げて、レジの混雑緩和につなげたい考えだ。(朝日新聞朝刊 2017年12月5日)

ファミリーマートでは「24時間営業はケース・バイ・ケースでいい」(沢田貴司社長)として、実験的に一部の店で24時間営業をやめている。

 またセブンイレブンでは、店舗での検品作業をなくす実証実験に取り組んでいる。井阪隆一社長は、「実証実験では、これまで店舗で行っていた検品作業を、物流センターで店舗ごとの納品単位でできないかを検証している」と述べた。
店舗では、発注商品が注文どおりに納品されているのか、検品用スキャナーターミナルを用いて確認しているが、検品作業に時間がかかっていた。
 井阪社長は、「検品作業を物流センターで行うことで、物流の効率化と店舗オペレーションの効率化ができる。自動検品になれば、1日3人時くらいの削減になる。検品作業は大変な作業であり、お店での働きやすさが向上する。人件費を下げるのではなく、ういた時間で接客をしてもらいたい」と、実験の狙いを説明した。(流通ニュース 2017年10月13日)

 以上の例では、従来「レジには人手が必ず発生する」「店舗での検品作業は必要府不可欠」といった決してなくならない作業と思われていたものにメスを入れ、なくす方向へ取り組んでいることである。実際サービス産業の職場でどれだけ業務を「やめる」「なくす」ことに挑戦しているだろうか。最も困難なことに注力する企業が生産性をダントツに向上させるものだ。

 下記の表はいくつかの業務の廃止例である。

 今まで当たり前であった業務に付加価値があるのかどうか、ゼロベースから問い直すことが重要である。判断基準はその業務がお金を生んでいるかどうかである。単純にお金を生まないと判断すれば、即やめてしまえば良い。「案ずるより生むが易し」〜物事はシンプルに考えて実行すべきである。生産性の低い企業はプロセス重視に偏っており、仕事を努力と時間で評価する。逆に生産性の高い欧米のトップ企業はすべて結果重視である。顧客満足が収益に直結する。  
 例えば会議が情報交換に終わっているのであればやめるべきだ。情報交換を事前のメールや掲示板で済ませる。会議は意思決定の場であり、目的から逆算して業務の再構築を図ることである。生産性を高めることが企業の競争力の源泉であり、残業の問題も解決でき、会社と社員が共にハッピーになる手段となる。

コラム「今年のトレンド予測」(2018年1月5日)

新年明けましておめでとうございます。
2018年が、みなさまにとって輝かしい年になりますことをお祈り申し上げます。
昨年は、本コラムをご愛読いただきありがとうございました。
本年も、どうぞよろしくお願い申し上げます。

2018年の<働・学・食・住・美>トレンド予測

2018年が幕を明けましたが、今年は、どのような年になるのでしょうか?
リクルートホールディングス社は、 2017年12月12日に、毎年恒例の「2018年のトレンド予測とトレンドを表すキーワード」を発表しました。これは、美容、アルバイト・パート、人材派遣、社会人学習、人材マネジメント、飲食、婚活、住まいの8領域における2018年の方向性を予測するものですが、この中から7領域を選び、2017年の予測と比較することで、昨年~今年のトレンド予測の特徴を考えてみました。

◆トレンド予測の特徴
2017年の予測を見ると、必ずしもその通りになったとはいえませんが、少子高齢化や待機児童問題、働き方改革、そしてSNSなどが背景になっているキーワードが多く見られました。
2018年については、中でも、「働き方改革」に関連する予測が多い印象です。
実際、社会人学習領域のキーワード「まなミドル」を先取りする形で、資格取得に向けた専門予備校の1つTACの株価は夏場から上昇基調となり、11月に入ってからは約3年ぶりの高値を付けています。

また、人材・キャリア領域の予測には、働き方改革に加え、人財難時代の働き手確保対策としてのシニアの活躍に対する期待が色濃く反映されています。

◆人財確保対策としてのシニア人財活躍推進
2025年に団塊世代が後期高齢者となり、2035年には人口の約3人に1人が65歳以上、206の年には人口の
約40%が65歳以上の超高齢社会に突入します。一方、15歳~60歳の生産年齢人口は減少の一途を辿り、
2060年には現在の60%弱にあたる4,400万人程度になると言われており、そのような中で、2017年11月の有効求人倍率は1.56倍とバブル期を凌ぐ人財難時代を迎えています。

①働き続けたい60代が増加~経験やスキルを活かした働く場の不足が課題
肉体的に働き続けられると答えた60代は92.1%。雇用形態にかかわらず、経験やスキルを活かせる実務でやりがいを持って働きたいと考えています。深刻な人財難は2018年以降も続くと想定される中、中途採用においては、豊富な経験、専門性、適応能力の高さが求められています。

②2017年に入り、シニアの応募者数、求人数ともに急増
シニアの応募数は2015年4-6月期と比較して2017年4-6月期は約2倍に増加。
「シニア」と「活躍」をキーワードに含む求人数は2015年4-6月期と比較して2017年4-6月期は約10倍に増加。
また、働きたいシニアのうち、仕事を探したがあきらめたと答えた人は34.9%。就労意欲の高いシニアが増加して求人数も増えているものの、マッチングがうまくいっていない現状があります。

◆学びに意欲的なミドルの増加
ミドル層は、ポスト不足とミドルへの教育投資額減少による現状による閉塞感を持っており、経済面・雇用面の将来展望への漠然とした不安を抱えており、学習意欲はその解消策の一つになっています。
さらに、社会人の学び直しの促進を目的に創設された「専門実践教育訓練給付金制度」の給付金が2018年1月から70%に引上げられ、対象講座が急速に増加。
働き方改革施策としての労働時間削減により拘束時間が減少し、平日の夜や休日に新たに学校に通う時間が生まれたことも、学びによる自己投資に意欲的はミドルが増加した背景になっています。

AI、ロボットによる就業機会の代替が叫ばれている現状、時代のニーズに合う市場性の高い学びにより自身の価値を高める動きは、今後も続くものと思われます。
企業が高い競争力を維持するためには、雇用の確保だけでなく、従業員の能力開発を推進することが、さらに重要になるのではないでしょうか。

コラム「仕事の質はスピードに比例する」(2017年12月25日)

仕事の質はスピードに比例する

このタイトルの解をわかりやすく例えると、テクノロジーによる自動化に挙げられます。工場におけるオートメーションはもちろんのこと、AIによるソリューション、RPA Robotic Process Automation:人間が行うデスクトップ画面上の操作を、ルールに基づいて自動的に再現する技術)によるデータ交換、業務スケジュール管理など、テクノロジーの進化によってスピードが加速度的に早くなり、質はより正確になります。

コンピューターによるテクノロジーに頼らなくても、アナログでのカイゼンにより仕事の質はアップし、スピードは早くなります。なぜならムダを省けば省くほど、時間は短縮され正確度を増すからです。

井原西鶴の「日本永代蔵」巻五に「大豆一粒の光り堂」という話があります。

「大和の朝日の里に川端の九助という小百姓がいた。牛ももたず、馬小屋のような家に住み、年に一石二斗の年貢をやっとおさめ、五十余歳になるまですごしていた。毎年、節分の夜には疫鬼をはらうために戸口や窓に鰯の頭や柊をさし、心祝いの豆をまくのであった。ある年、九助は夜が明けてから豆を拾い集め、その一粒を野に埋めた。すると、夏には青々と葉がしげり、秋には実って一合ばかりの収穫があった。これを溝川のところにまき、毎年繰り返すうちにしだいに収穫がふえ、十年もたつと八八石にも達した。この代金で九助は大きい灯龍をつくらせ、初瀬の街道に立てて常夜灯とし、今も豆灯寵とよばれている。
こういった心がけなので、九助はしだいに家も栄え、田畑を買い集めて大百姓となった。
四季それぞれの農作物に肥料をほどこし、田の草をとり、水をあたえて手入れするので、稲の実りもよく、綿の栽培も順調であった。九助はいつも油断なく働き、そのうえ、万事に工夫をして便利な農具も発明した。鉄の爪をならべた荒おこし用の鍬、調製用の唐箕や千石どおし、さらに後家倒しの異名のついた千歯扱もつくった。また、女の綿仕事の能率化をはかつて唐弓という綿打ち道具をつくって成果をあげ、四、五年のうちに大和にかくれもない綿商人となり、財宝をどんどんたくわえた。 こうして三十年あまりで一千貫目の身代となり、八八歳で世を去った。」

「後家倒し」とは、この川端の九助が考案した「千歯扱き」です。
株式会社クボタHP「くぼたのたんぼ」によれば、次のように「千歯扱き」を紹介しています。

乾燥させた稲の穂先から籾を落とす作業が脱穀 (だっこく) です。稲扱き (いねこき) とも言います。「丁寧」と「能率」という矛盾する二つの要求を満たすために、さまざまな工夫がこらされてきました。
近世前期には竹製の扱き箸 (こきはし) が使われていました。竹を箸のようにした道具で、一日に扱く籾の量は男性が12束、女性が9束ぐらいだったそうです。

千歯扱きは元禄年間に発明された画期的な農具です。最初は麦を脱穀するための竹製の歯でしたが、やがて鉄の扱き歯に改良され、稲の脱穀用として普及しました。鉄の歯の隙間に稲の穂先を入れて、引き抜くと籾だけが落ちます。籾が付いたままの小さな穂先が多く出るので、さらに唐棹 (からさお) で何度も叩いて籾を分離します。粒々辛苦と言って、一粒一粒が苦労して育てたものです。一粒も無駄にはしません。
その後、足踏脱穀機、動力脱穀機と発達します。1時間当たりの作業能率は千歯扱きで約45把(元禄時代)、足踏脱穀機で約250把~300把(大正時代)、動力脱穀機では600把以上と伝えられています(昭和初期)。


参照:http://www.tanbo-kubota.co.jp/foods/tools/13.html

そのため、脱穀作業の臨時雇いの必要がなくなり、女性の賃仕事であった脱穀作業が無くなったため「後家倒し」と呼ばれた所以です。
足踏脱穀機が大正時代の発明であることから、元禄時代から約200年間も脱穀の主道具であったことを考えると、九助の発明がいかに素晴らしいものかが理解できます。つまり、「丁寧」=質、「能率」=仕事効率、スピードのそれぞれが矛盾することなく、一挙両得の効果を上げています。

また、仕事の質は仕事のやり方、段取りなどでも向上することができ、スピードは早くなります。

リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査2017」では、週当たりの労働時間の把握に加えて、仕事の分解を試みています。具体的には、それぞれの仕事を、(1)本来の担当業務で成果と直結している仕事、(2)周辺的な雑務、(3)待機や客待ち等の手待ち時間に分けて、合計が100になるように割合を調査した結果が図表1です。業種により仕事の割合はまちまちですが、平均的には、本来業務74.3%、周辺雑務17.9%、手待ち時間7.8%になります。本来業務以外が約25%を占めており、そこに仕事効率化の余地があることがわかります。

参照:http://www.works-i.com/surveys/panel-surveys.html

今回の例では本来業務をテクノロジーやカイゼンで生産性向上としたものです。しかし仕事には本来業務以外が約25%もあり、これをなくせば生産性は約33%も向上するのです。

つまり仕事の効率化を図り、抜本的に生産性を向上する視点は、
① 本来業務のIT化、カイゼンの実践
② 周辺雑務の撲滅
③ 手待ち時間の解消
の3点にあります。
①では生産性が数倍から数十倍に、②と③を合わせて約33%向上します。前者では投資を必要とするものがありますが、充分投資額を回収し、より利益をもたらします。後者では投資せずにムダを省くことができます。

これらは来年のコラムでの課題として、考察していきます。
今年最後のコラムとなり、読んでいただきました皆様に、厚く御礼申し上げます。誠にありがとうございました。来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。