特別寄稿「小杉俊哉氏」をアップしました

今回は「リーダーシップ3.0」や「ラッキーをつかみとる技術」「30代はキャリアの転機」などの著書で知られる、小杉俊哉氏のインタビュー記事を掲載いたしました。

リーダーシップのあり方やご自身のキャリア形成についてじっくりとお話を伺いました。
リーダーとして課題を感じている方や働き方改革の突破口を見つけたい方のヒントになるコラムです。

記事はこちら⇒https://j-bps.com/project/kosugi/

自律はリーダーシップ3.0の第一歩:小杉俊哉氏インタビュー

小杉 俊哉

Kosugi Toshiya

慶應義塾大学大学院理工学研究科 特任教授

立命館大学大学院テクノロジー・マネジメント研究科 客員教授

合同会社THS経営組織研究所 代表社員

早稲田大学法学部卒業。マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院修士課程修了。NEC、マッキンゼー、ユニデン人事総務部長、アップルコンピュータ人事総務本部長を経て独立。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科准教授を経て現職。
専門は、人事、組織、キャリア、リーダーシップ開発。組織が活性化し、個人が元気によりよく生きるために、組織と個人の両面から支援している。
著書に『職業としてのプロ経営者』、『起業家のように企業で働く』(クロスメディア・パブリッシング)、『リーダーシップ3.0 〜カリスマから支援者へ』(祥伝社新書)など多数。

「自らのパートを分け与える」ことがミッション

あるとき、自分のミッションに気づきました。
それまでは、人の評価が気になり、評価を得るために仮面をかぶっていたのですが、それをとることにしました。私のミッションは、「自らのパートを分け与えることによって、人が気づきをもち、元気になる支援をすること」です。

それ以来、ミッションと関係のあることに注力し、関係のないことはやらないようにしました。具体的には、大学での授業、自主ゼミ、企業研修、講演、執筆活動を行っています。

慶應義塾大学での自主ゼミは、学生も私も、「やらなければならないこと」「単位や報酬などの対価を得られること」ではありません。

つまり、オブリゲーション(責務)を伴うわけではないのに10年間続いているのは、純粋にそれをやると元気になり、嬉しいからです。自主ゼミに参加している学生たちは、どんどん主体性を発揮し、自律的な活動が増え、とても元気になります。

この自主ゼミを通して、今年学生とOBOGでクラウドファンディングを使い「コスギの言葉」を出版しました。その中の言葉を借りれば「言葉と環境があれば人は自律的に変わっていく」ということを体感しました。実際に対面して話をするのではなく、本を読んだだけでも、メッセージに刺激を受け、変わっていく人はいるわけです。

ある学生は、「人はイメージ以上にはなれない。ただし、イメージしたところまではいける」という私の言葉を聴き、「人生が変わるくらいの変化」をしました。それまでは諦めていたこと、できないと思っていたことにチャレンジし、活躍するようになっていきました。自主ゼミでは、そのようなことがたくさん起こります。

人は、理論で納得させられても、動こうとはしません。
自らのパートを分け与えることにより、立場や世代が違っていても、魂が揺さぶられ、その結果、人は変わろうとします。パートを分け与えるということは、自分の血と肉を与えるイメージで、仮面を取り、自身らの失敗経験も包み隠さず話すことだと思います。

私は、MIT(マサチューセッツ工科大学)に留学をしていますが、企業留学ではなく自費留学です。家族を帯同し、借金をして行ったので、後がないわけです。

非常に優秀な学生の中で授業の難度についていけず総長から退学警告を受け、もがき苦しんでいる中、モルガンスタンレーにサマーインターンで採用されたときには、周囲から「奇跡」と言われました。なんとか卒業にこぎ着け最難関のマッキンゼーに採用された時も、周囲は驚いていました。

そのように苦労して入社したマッキンゼーでも、優秀な人たちに囲まれ求められるものに応えられないと感じて、1年で辞めました。そして、その後のキャリアも、決して平坦ではありませんでした。

振り返ると失敗や大変なことが多く、挑戦し、もがいてきたのですが、その結果、他の人には得がたい経験を積んだことが、現在、経営者から学生まで、世代を問わず私の話を聴いてくださることにつながっているのだと思います。

現代はリーダーシップ3.0の時代

リーダー像は、リーダー本人だけではなく、時代背景や組織の置かれている環境よって変化しています。
私は、リーダーシップの変化を、以下のように1.0~3.0とタイプに分けて捉えています。

  • 1.0 中央集権的な権力者
  • 1.1 分権指向の権力者:同じ権力者でも事業部に責任者を置き、権限を委譲
  • 1.5 調整者:権力で率いるのではなく、組織全体で共有する価値観と働く意味を与え、協調を促す
  • 2.0 変革者:組織の方向性を提示し、大胆に組織改編を行ない、競争や学習を促すことで組織を変革
  • 3.0 支援者:組織全体に働きかけてミッションやビジョンを共有し、コミュニティ意識を育てる。

現在は、リーダーが支援者としてメンバーの主体的な行動を支える<リーダーシップ3.0>の時代であると考えています。
背景には、これまでのように、画期的な技術やサービスを軸に、参入障壁を高くして長期に亘り収益を上げるビジネスモデルが通用しなくなったことがあります。

このような時代に企業を持続可能な存在にするためには、メンバー一人ひとりに働きかけ、主体性をもって自律的に動くことを支援するリーダーの存在が必要です。

かつてのようなカリスマ性のある強いリーダーではなく、人間的魅力によって周囲を動かすソフトパワーを備えたリーダーが求められています。

リーダーシップは誰もが発揮できるものですし、特に日本人は、リーダーシップ3.0を発揮する資質を持っていると思っています。

日本企業でリーダーシップ3.0を機能させるためには?

日本の経営者の方たちとお話をすると、多くの方が、「リーダーシップ3.0の考え方には大変共感しているが、うちの会社では社員の自律が進んでいないので、残念ながら3.0を発揮する段階になっていない」とおっしゃいます。

しかし、今は、社員一人ひとりに自律してもらわないと持続的な発展が難しい時代です。
さらには、多様な人財に自律的に動いてもらうことが求められる時代といえます。
ダイバーシティ&インクルージョンが必要であることは、多くの企業経営者は気づいています。

(注)ダイバーシティ&インクルージョン
多様な背景を持つ人財(ダイバーシティ)を組織に受容し、一人ひとりの意見やアイディアを聴き入れる(インクルージョン)ことで、変化の速いビジネス環境と多様化する市場に柔軟に対応し、組織の競争力を上げる経営戦略

ダイバーシティ&インクルージョンを実現するための第一歩は、多様な人財が発信し、活躍できる風土に変革することです。
そのためには、年功的要素を排除し、誰もが活躍できる場を意図的に作っていくような仕組みが必要です。

特に、優秀でやる気のある人には、バックグラウンドに関わりなく若手であっても、経営人財として抜擢し、トップとしての判断・決断を経験させるような取り組みが必要です。

現在の日本企業でダイバーシティ&インクルージョンを実現するためには、トップがリーダーシップを発揮して風土を変革することが求められます。
もし、現在のトップが変革できないというのであれば、社外からプロ経営者を連れてくる選択肢も考えなければならないと思います。

リーダーシップ3.0を目指す人へのメッセージ

リーダーシップ3.0のスタートとして、自律が大切です。
私が考える自律は、責務を果たすことに加え、「責務ではないけれど、やったほうがよいと思うこと、本当にやりたいこと」を実行することです。

やるべきこと、やらなければならないことだけをやっているのは、マネジメントです。
リーダーシップは、「やらなくてもよいこと」に足を踏み出さないと発揮できません。

まず、これをやったほうがよいのではないか、時間があればやりたい、誰かやってくれないかなぁ、と思うこと、これはあなたが気づいているという点で、Can(可能性、能力)の領域です。そこに足を踏み出す勇気を持って欲しいと思います。さらに、自分が責任者で自由に出来るとしたらやりたいこと、いわゆるWill(意志)の領域を考えてみるのです。

キャリアの世界では、Will,Can,Must(責務)の3領域が重なるような働き方が良いとされていますが、私は、この考え方を「Static(静的)モデル」と呼んでいます。
一方、私が考える自律的な働き方は、「Dynamic(動的)モデル」と呼んでおり、3つの要素を動的なイメージで表現しています。(図参照)

MustとWillの2つが重なれば、それは、会社のビジョンと自身のビジョンが重なることで、仕事にやりがいが生まれます。
また、CanとWillが重なる領域では、会社のビジョンと自身のビジョンが重なり得ることで、今は会社のビジョンではないかもしれないが、将来を創ることになる仕事が発生します。

CanそしてWillの領域、すなわちやらなくてもよいことに踏み出すことでリーダーシップが発生します。
どこに対して発生するかと言えば、最初は、自分に対して発生します。
これを「パーソナルリーダーシップ」とか「セルフリーダーシップ」というのですが、別名、「自律」と言います。

Canは、身近なできることから始めればいいのです。
例えば、廊下にダンボールが積まれたままになっている状況があり、来客の時にみっともないので仕舞う場所を変えたほうがいいと思った人が、そのことを会議で提案し、ダンボールを片付けるというようなことです。

自身が主体的に動くことで周囲に影響を与え、その結果、人を動かして状況を変えたのですから、リーダーシップを発揮する経験を得たわけです。

この場合、上司や周囲の人たちは、フォロワーになったと言えます。
そのような経験を積み重ねることが、自律を遂げるためにとても重要なのです。

自律とは、自らが率先して何かを行うということで、自律がリーダーシップ3.0のスタートです。そして、そのために、MustとWill、CanとWillが重なる接点を見つけることを提案したいと思います。
その接点を見つけることができると、リーダーシップを発揮することができますし、会社で働くことが楽しくなります。

特別寄稿「吉越浩一郎氏」を更新しました

https://j-bps.com/project/yoshikoshi/

今回はトリンプ・インターナショナル・ジャパンを改革し、19年連続増収増益に導いた元代表取締役社長の吉越浩一郎氏をゲストにお迎えしました。
「デッドライン仕事術」「早朝会議」「完全ノー残業」などで有名な吉越氏ですが、改革の真髄は、社員の意識を変えることでした。
業務改革、残業削減、社員の生産性向上に取り組まれている方に大きなヒントと勇気を与えてくれるコラムです。

即断即決経営・19年連続増収増益を可能にした社員改革による組織づくり:吉越浩一郎氏

吉越 浩一郎

Yoshikoshi Koichiro

吉越事務所代表

1947年千葉県生まれ。
ドイツ・ハイデルベルク大学留学後、72年上智大学外国語学部  ドイツ語学科卒業。
極東ドイツ農産物振興会、メリタジャパン、メリタ香港の勤務を経て83年にトリンプ・インターナショナル(香港)に入社、リージョナル・マーケティングマネージャーとして勤務した後、86年末トリンプ・インターナショナル・ジャパン㈱に異動。87年代表取締役副社長、92年に代表取締役社長に就任し、2006年末に退任。

トリンプ・ジャパンでは、早朝会議を毎日開催し、即断即決経営を武器に19年連続増収増益を達成。その間、デッドライン、残業ゼロ、がんばるタイム、課長以上には毎年二週間連続の有給休暇を強制するなどユニークな経営手法で話題になる。2004年には「平成の名経営者100人」(日本経済新聞社)の一人に選出された。
2008年、第37回ベストドレッサー賞<政治・経済部門>を受賞。

吉越事務所代表。現在、東京と、夫人の故郷である南フランスの2か所を拠点に幅広く講演活動、執筆を行う。「残業ゼロの仕事力」(日本能率協会マネジメントセンター刊)、「デッドライン仕事術」(などベストセラーも多数、既に50冊以上の書籍を出版。

社員の意識変革に決定的な役割を果たした「デッドライン」

社員の意識変革を促そうとすれば、必ず抵抗があります。
それでも、決して諦めず、成功するまでやり続けること。
これが改革を進める際に最も重要です。

本気で生産性を向上し、残業ゼロと高業績を実現したいのであれば、トップが社員を論理的に説得し、一緒になってやり抜く姿を見せなければなりません。

日本企業の現場力は素晴らしいのですが、リーダーシップが弱いことが大きな問題です。

トリンプ・インターナショナル・ジャパンにデッドラインを導入した時は、社員にデッドライン(何月何日)を徹底して守らせるために、会議でつけた全員のデッドラインをすべて書き留めて、自分の方で確認して進めていきました。

会議で打ちあわせることはせず、課題解決施策の提出期日だけをデッドラインとして決め、担当者に自分で解決施策を初めから考えさせます。それが新入社員であっても同様です。


当初は、ロジックができていないヌケモレの多い施策が提出されますので、「なぜ、こうなるのか」「この点はどうなのか」「どうすればよいと思うのか」と徹底的に疑問を投げかけ、適切な回答ができない場合は、問題点を明確にした上で、出し直しということにして、再度デッドラインを設定して再検討・再提出させます。
敢えて「教える」ことをせず、徹底的に自分で考えさせるのです。

「報・連・相」ではなく、任せてやり切らせ、PDCAを何度も回させるのですが、私は、このことを習って自ら育つという意味で【習育】と呼んでいます。


習育を実践するために全員のデッドラインを控えた書類を日付別のフォルダで管理していたのですが、毎日、デッドラインが数十も出て来るため、本人に確認して質問するこちらの労力も大変でした。こちらが決めたデッドラインは100%当日になると問いただされることを徹底していかないと意識改革は成し遂げられないのです。

デッドラインは毎日の早朝会議で決めていましたが、一旦スムーズに流れ出すと私の方で意図的にデッドラインを早めていくので、最終的に翌朝がデッドラインになったため、社員はいつも悲鳴を上げていました。私の秘書に、デッドラインを書いた書類を捨てて欲しいと本気で依頼する社員がいたほどです。

結局、この繰り返しが社員の意識改革につながり、判断スピードとロジックが鍛えられたことで生産性が向上し、結果的に会社全体の経営スピードが飛躍的に上がり、高業績を実現できたと考えます。さらに、このことにより、完全な残業ゼロや課長以上の最低2週間以上の連続有給休暇も実現できました。

早朝会議では、容赦なくデッドラインを設定され、厳しく内容を追いかけられるため、中には席を蹴って出て行く管理職もいました。通常は考えられないことでしょうが、そのようなことができる関係が築かれていたと思います。

決めたことは厳しくやり切る、しかし、社員にはすべての情報をオープンにしました。


常に厳しいことを要求しますが、お互いに結果を出して、あくまでも社内は明るく、楽しい雰囲気にすることを心がけました。

そのため、早朝会議では、ジョークが飛び交い何でもフランクに言い合える雰囲気だったと思います。
そのような雰囲気づくり・コミュニケーションは、リーダーに求められる能力の中でも最重要な能力です。

生産性向上とは、短時間でより高い付加価値を生み出すこと

今までと同じ仕事を短時間でこなすようにするばかりではなく、同じ短時間でも、より高い付加価値を生み出すようにすることが本当の生産性向上です。

その意味では、従来の働き方を変えなくては生産性向上を実現できません。
仕事の質を高めるために私が実践してきたことをまとめると、図1のようになります。


 

図1:社員の仕事の質と経営スピードを高める『吉越流・生産性向上』の考え方

スタート時点での仕事がオレンジの三角形だとします。その人は、より付加価値の高い「100」の仕事をすることができるのですが、多くの時間を「60」程度の生産性の低い仕事に費やしています。そういったレベルの低い仕事の多くは、IT化・ルーティン化・マニュアル化できる仕事なのです。

どうしても今後も自分でその仕事をする必要があるのなら、その仕事の効率を高める必要も出ていますが、より高い価値を生み出すために、「60」をIT化、あるいはマニュアル化してパート、アルバイトなどのより報酬の低い社員、あるいは自分の部下に、そういった仕事を逐次移行していくのです。場合によっては、その見直しによってその仕事そのものをなくしてしまうことができるかもしれません。

 

そのような見極めと整理を行うのがステップ1です。


勿論、この種のステップ1の仕事は流れ作業的な仕事ではなく遥かに内容のある、すでに「100」以上の内容の仕事になります。

オレンジ色の仕事領域を抱えたまま業務を増やせば残業が増え、アウトプットの質が落ちるだけですが、仕事の一部を切り離すことにより、その社員は、より複雑かつ重要な判断が伴う仕事に、その分の時間を使うことが可能になり、同じ時間で「120」の価値を生み出すことができるようになります。

 

これがステップ2の黄色の三角形です。


黄色領域の業務においても同じことが言えるため、さらに繰り返して一部の業務を切り離し、次のステップに上がると「140」の価値を生み出します。

このように自らの仕事の質をどんどん高めていくことで、生産性の高い組織づくりを実現できるのです。こういった仕事の仕方をすることで、部下にどんどん仕事を任せ、習育をすることができますし、パート、アルバイトなどのより報酬の低い社員との同一労働・同一賃金といった問題も起きなくなります。

そして、このような仕事の切り分けやIT投資を全体最適視点で判断し、徹底していくのは、言うまでもなくトップの仕事です。

 

図2は、優先順位のマトリクスです。
現場では、緊急度の高い仕事(図の1と2)が優先され、3と4の領域が放置される傾向にあります。


そのため、上司は3と4の領域の仕事にデッドラインを設定し、組織として放っておかずに、やり切るようにします。デッドラインが引かれ、緊急度が上がるので、「3領域」の仕事は「1領域」の仕事になり、「4領域」の仕事は「2領域」の仕事になります。

「3領域」は、重要度が高いにも関わらず後回しにされている業務ですから当然として、緊急度・重要度が低い「4領域」までやり切るのは、なかなか大変なことです。とはいえ、業績に関わってくる組織のレベルは、徹底度で決まるのです。

例えば、デスク周りの整理整頓は、「4領域」に属することです。
「忙しい」のを理由に整理整頓されていない状態を見逃せば、細部をいい加減にする緩みが組織に生まれますし、効率面からも隠れた問題になります。

「4領域」まで徹底することにより、緩みを一掃する覚悟を見せるのです。
成長するためには、自他ともに律する厳しさがないといけないと考えます。


 

優先順位のマトリクス

「女性活躍推進の課題と展望」:楠田祐氏

楠田 祐

Yoshikoshi Koichiro

中央大学大学院戦略経営研究科 客員教授

戦略的人材マネジメント研究所 代表

K’s HR Label 代表

東証一部エレクトロニクス関連企業3社の社員を経験した後にベンチャー企業社長を10年経験。
2009年より年間500社の人事部門を連続訪問。人事部門の役割と人事の人たちのキャリアについて研究。
多数の企業で顧問なども担う。シンガーソングライターとしても活躍。

主な著書「破壊と創造の人事」(出版:ディスカヴァー・トゥエンティワン)2011年は、Amazonのランキング会社経営部門4位(2011年6月21日)を獲得。

主なCDアルバム「破壊と創造の人事」(K’s HR Label)2015年6月
「残業イルミネーション」(K’s HR Label)2015年12月

女性活躍推進の課題と展望

男女雇用均等法の施行(1986年)から30年が経過した。
先進的な大手企業は、2000年〜2005年に女性活躍推進に対する取り組みをスタート。
アベノミクスでダイバーシティ対応が叫ばれるようになった2014年〜2015年にその他の多くの企業が取り組みを開始した。
霞ヶ関から遠い距離にある企業ほど、取り組みが遅い感触がある。

女性活躍推進の根本的な課題は4つある。

  1. 社長が自らの言葉で内発的に推進を語っているか
    何のためにダイバーシティ対応、女性活躍推進が必要なのかを言い続ける
  2. 男性社員が育児休暇を取得しやすい環境か
  3. (時間・空間)制約社員に対するピープルマネジメントができる管理職が多いか
    • 時間制約社員:時短勤務など時間的な制約を持ちながら働く社員(男女問わず)
    • 空間制約社員:育児や介護などの事情で転勤ができない社員(男女問わず)
  4. ワーキングマザーのストレス状況

2014年に取り組みを開始した企業に顕著に見られる特徴は、経営企画室や秘書室、人事が作成したダイバーシティへの取り組み姿勢の文書を社長が読むことに終始している。
この状況では、社員・管理職は、総論賛成、しかし各論では腹落ちしない状態のまま。

つまり、

課題1については、社長の本気度を社員が推し量って対応していると言える。
課題2:男性社員の育児休暇取得について

いわゆる「パターナリズム」がはびこっている。

(注釈)
パターナリズム=強い立場にある者が、弱い立場にある者の利益になるようにと、本人の意志に反して行動に介入・干渉すること。
この場合、男性管理職に差別している意識はないが、「区別」をして介入・干渉している。

現場でよく聞くのは、男性社員が育休の取得を上司に申請すると、

  • 「奥さんが働いているのか?」(=奥さんは育児ができないのか?)
  • 「休んだら(君の)評価が下がるぞ」
  • 「こんなに忙しいのに、君は暇なのか?」

つまり、女性の育休は認めるものの、男性が休むのはマズイ、という趣旨のことを言われる。
パターナリズムは、家庭の事情で転勤を望まない男性社員に対しても発しられる。

課題3:制約社員のマネジメント

今や、20〜30代社員のマジョリティは、夫婦で子育てをしたい!と考えている。
旧来の役割分担(女性は家事と育児を担当、男性は働く)意識は変化している。
制約社員マネジメントの問題は、役割意識の変化だけが要因ではない。
2014年3月末に団塊世代の再雇用が終了した。

2020年のオリンピックイヤーには、団塊世代は70〜75才になり、要介護状態になる人が増えてくることが予想されている。
(注釈)健康寿命:平均寿命から介護(自立した生活ができない)を引いた数。
2012年に厚生労働省が発表した日本人の健康寿命は、男性で70.42歳、女性で73.62歳)

この頃には、バブル入社世代がコア人材になり、管理職になっている人も多いだろう。
核家族時代に生まれているため、夫婦それぞれが親の介護をしなければならない世帯も多いと思われる。
コア人材が親の介護で休職・退職することは、企業にとって大きな損失になるため、「2020年問題」と言われている。

もう1点、大きな問題がある。

育児休暇は、「祝福される出来事」であるため周囲の人に発表したくなるが、親の介護は、隠す人も多い。
昇格に響くのではないかという配慮が働くためだ。

いわゆる「隠れ介護」であるが、このことも、すでに課題として顕在化している。
以上の理由で、今後は、女性社員・男性社員とも制約社員が増えてくると考えられる。

対策は、2つある。

  • 1つは、管理職が、時間制約社員のピープルマネジメント力を身につけること。
  • もう1つは、短時間正社員のマネージャーや執行役員を登場させることだ。

超大手企業は、すでに手を打ち始めている。
例えば、長時間労働の見直しと業務効率(生産性)の向上。
推進本部を設け、短時間で生産性を高める業務の進め方を推進している企業もある。

もう1つは、働き方改革への取り組み。
フレックスタイム制や在宅ワークなどの内発的業務管理意欲を高める取り組みだけでなく、縦割り組織を廃し、事業ユニット制を敷いて開発効率を高める取り組みなど、組織改革への取り組みも始まっている。

課題4:ワーキングマザーのストレス問題

上手くいっている企業では、残った仕事を周囲に引き継ぎ、保育園に子どもを迎えに行くことができる環境。
うまくいかない企業では、仕事がたまっているが周囲に頼むことができず、電話で延長保育を依頼するが、それでも終わらずタクシーで保育園に向かう、という日々が続く。当然、家計に響くし、ストレスが溜まる。

しかし、管理職は、自身がプレイングマネージャーで余裕がないため、そのような状況が見えておらず、結果、放置されている。

ある企業では、時間制約社員が働き続けるためのプロジェクトが組まれている。
そのプロジェクトでは、「できない理由」を3回発言したらレッドカードで退場。
「いかにやるか!」を話し合い、知恵を絞ることが約束事になっている。

女性活躍推進は、女性の男性化ではないことを、しっかり意識することが大切。
最も効果的な解決策は、社長の意識醸成。
社長の意識が変われば、ウォーターフォールのように、その意識が管理職へ、そして社員へと流れていく。

女性活躍推進がなかなか進まない企業では、人事部、経営企画などが、社長が自分の言葉で必要性を語ることができるよう、社長の意識を変える方策を考える必要がある。

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