2017年10月2日

一色一生

染織家で紬織の人間国宝、志村ふくみ氏は、
「一色一生」の如く気持ちで、
植物染料からいかに美しい色を出すかに
真剣に取り組み、そのために
一生を費やすことも辞さない方です。

一昨年、個展に行きましたが、
このような姿勢で染め上げた糸を使い、
紡ぎだされた織物の風合いや色合いは、
そこに立ちすくんでしまうほどの
素晴らしい作品の数々でした。

人生の本質を突いた言葉も
心に刺さります。

『自分の色というものは、
たった一つしかないのかもしれません。
それを求めてもらいたいと思います。

一つしかない色だけど、喜びや悲しみなど様々な感情、
刺激によって輝いていく。
その色に出逢うための人生じゃないですか。

それと同じように、
人の人生も織物のようなものだと思うんです。
経(たて)糸はもうすでに敷かれていて
変えることはできません。

人間で言えば先天性のもので、
生まれた所も生きる定めも、
全部自分ではどうすることもできない。
ただ、その経糸の中に陰陽があるんです。
何事でもそうですが、織にも、
浮かぶものと沈むものがあるわけです。
要するに綾ですが、これがなかったら織物はできない。
上がってくるのと下がってくるのが
一本おきになっているのが織物の組織です。

そこへ緯(よこ)糸がシュッと入ると、
経糸の一本一本を潜り抜けて、トン、と織れる。

私たちの人生もこのとおりだと思うんです。
いろんな人と接する、事件が起きる、何かを感じる。
でも最後は必ず、トン、とやって一日が終わり、朝が来る。
そしてまた夜が来て、トン、とやって次の日が来る。
これをいいかげんにトン、トン、と織っていたら、
当然いいかげんな織物ができる。
だから一つひとつ真心を込めて織らなくちゃいけない。
きょうの一織り一織りは
次の色にかかっているんです』。

いいかげんにトントンするのではなく、
一色一生のごとく気持ちで、
丁寧に日々を紡いでいきたいですね。

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