2018年4月10日

コラム「完璧なチームを作る鍵」(2018年4月10日)

Googleの生産性向上プロジェクトが明らかにした
<完璧なチームを作る鍵>

参考:”What Google Learned From Its Quest to Build the Perfect Team” The New York Times, FEB. 25, 2016

米グーグルには数百のチームがあり、従業員は複数チームを掛け持ちして働いていますが、チームの生産性には大きな差異があります。
「なぜ、そのような差異が生まれるのだろうか?」
この疑問を解消して完璧なチームを作るために、グーグルでは従業員の働き方の調査・分析を実施。
2012年に着手された生産性向上プロジェクトは、「プロジェクト・アリストテレス(Project Aristotle)」と呼ばれ、同社の「人材分析部(People Analytics Operation)」によって実施されました。
プロジェクト・アリストテレスでは、社内の統計専門家やエンジニアだけでなく、組織心理学や社会学の専門家まで多彩なエキスパートを集めて分析作業に当たらせました。このプロジェクトからわかったことは、何だったのでしょうか?


◆共通のパターンが見つからない!
分析の対象として特に重視したのは、「チームワーク」でした。
社内の様々なチームを観察し、生産性の高いチームとそうでないチームの違いを明らかにしようとしました。

たとえば、
「同じチームに所属するメンバーは、社外でも親しく付き合っているか」
「彼らはどれくらいの頻度で一緒に食事をしているか」
「彼らの学歴に共通性はあるか」
「外向的な社員を集めてチームにするのがいいのか、それとも内向的な社員同士の方がいいのか」
「彼らは同じ趣味を持っているか」など、多岐に渡る観察を行ないました。

しかし、パターン抽出が得意なグーグルであるにも関わらず、この観点での分析では顕著なパターンを見出すことができなかったようです。
友だちのように親しいチームとまともに話すのは社内だけ、というチームの間に生産性の差異が見られず、また、カリスマ的リーダーがいる階層だったチームと人間関係がフラットなチームの間にも、生産性の差異が見られませんでした。

結局、このような「チーム風土の在り方」と「労働生産性」の間には、大きな相関性がないのではないか
――そう考えたグーグルの人員分析部は、次は、チームの「規範(norm)」にこそ生産性のポイントがあるのではないかと考え、そこを洗い出すことにしました。
※規範とは、チーム内で共有する「暗黙のルール」や「行動規準」、あるいは「チーム・カルチャー」のようなものを指します。

しかし、この観点でも、目立った違いは発見されませんでした。
さらに、リーダーやメンバーの優秀さという観点でも調査を行いましたが、そもそも、グーグルではチーム編成が固定化されておらず、同時並行的に複数のチームに所属しており、中には、多くのメンバーが重複するチームが存在していますが、それらのチーム間にさえ生産性の差異が発生することがわかりました。

◆生産性の高いチームの鍵は、【心理的安全性】にあった!

このように、目立ったパターンが見出せず困り果てた人材分析部では、プロジェクトの初期段階で当たっていた集団心理学に関する学術論文などの調査結果を、再度深く当たることにしました。
そして、そこから浮かび上がってきたのは、「他者への心遣いや配慮、共感」といったメンタルな要素の重要性でした。

例えば、チーム内で誰か一人だけが話し、他のメンバーは(話している人に遠慮して)ほとんど黙り込んでいるチームは、良い成果を生み出さない。
逆に、チームメンバー全員が活発に発言するチームは成果を挙げるというパターンが判明しました。
「全員が話す」ことがルール化されているのではなく、あくまでも自然発生的にそうなることが重要とのことです。

「こんなことを言ったら他の人から馬鹿にされないだろうか」
あるいは、「リーダーに目をつけられないだろうか」といった不安を感じないということ、つまり、心理学の専門用語でいうところの「心理的安全性(psychological safety)」と呼ばれ雰囲気が担保されているかどうかが、チームの成果を高めるための鍵であることが明らかになりました。

グーグルのこの分析は、非常に興味深いものです。
というのは、日立製作所が同様の仮説を立て、チーム生産性向上の鍵を「フラットで活発な会話ができる関係性」としているからです。
心理的安全が担保されていないければ、人は、ある種の仮面を被って仕事をするようになります。
本来の自分を隠し、本心からの意見を言わないようにして、表面的な関係を持つようになります。

「発言しても、どうせまともに取り上げてくれないだろう」
「何か言って(やって)責任を負わされるより、言われたことだけをやっているほうが安全だ」
と自己防衛本能が働くのではないでしょうか。

そして、結果的に、そのようなチームではお互いが疑心暗鬼になり、共通の目標・目的達成のために全力を出し切ることは難しくなるでしょう。
安心安全空間を作り、チームの生産性を向上するためには、他者からの批判や攻撃、反論にさらされることなくお互いの本音を話すことができる<対話の場>が必要なのだと思います。

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